幕開け



とある希望ヶ峰学園の、昇降口。固く閉ざされた扉を前に、私たちは集まっていた。全員、校舎に足を踏み入れた瞬間意識を失って、今まで眠っていたというのだ。

「響子ちゃん」

中学の友達を見つけて、声を掛けると彼女は無言でこちらを見たあとそのまま視線を逸らした。

「……今は他人のふりをしておくべきだと思うのだけれど。まあいいわ、好きにしなさい」

「ごめん、響子ちゃん」

「……私はここでは綾咲さんと呼ぶわよ」

そう言ったきり、なにやら考え込んでいるようだったのでそっとしておくことにした。

「あの。ボクは苗木誠。一応、超高校級の幸運として入ってきたんだ。……キミ、は?」

そのままぼんやりしていると一人一人に挨拶をして回っているらしい、小柄で、どちらかというと可愛い顔立ちをした少年に声をかけられた。どうやら自己紹介は私で最後のようだった。

「私は綾咲マヤ。超高校級の心理学者として入学してきたの。よろしくね」

「綾咲さん……、もしかしてどこかで会ったこと、ううん、ごめん。やっぱり気のせいだと思う。よろしくね」

「ナンパでもしてるの? なんて、冗談。でも、私も、君とはどこかで会ったことがある気がするなぁ……」

ナンパしてるのか、と問えば彼は大袈裟なくらいにええっ!?と慌てふためくものだからついクスクスと笑ってしまった。

「キミも? うーん、やっぱり初めて会った気がしないんだよね。あ、違うからね? あの、えっと、ナンパしてる訳じゃないから!」

「うん、わかってるよ。大丈夫。私も、同じ気持ちだしね」

「そうなの? 不思議だなぁ……」

彼の他には御曹司の十神くん、アイドルの舞園さん、プログラマーの不二咲さん……とにかく各方面からやってきた様々な超高校級の才能を持つ生徒ばかりが集まっている。皆、この希望ヶ峰学園に入学する筈だった。それが、どうしてこんな事に?

その時だった。突如アナウンスが流れて、全員体育館に集まれという。一部の者は嫌な予感を感じているようだったがここでじっとしていても仕方がない。私も体育館に向かうことにした。



ここで何が起きるのかを、私は、知っている。
いよいよ始まるのだ。

───────コロシアイが。



体育館に集まると、教壇にモノクマと名乗る奇妙な白黒のロボットが現れた。皆は不気味だと言っていたが、私は可愛いと思っていた。可愛いものは、好きだ。そのモノクマが言うには、やはり想定していたとおり、コロシアイ生活をするとのことだった。

この校舎は完全に隔離されており、脱出口はない。ここで永遠に仲良く皆で暮らす。ここから出る方法はただ一つ。


───────誰かを殺すこと。


その場に緊張の糸が張り巡らせられて、誰もが皆黙り込んだまま動かない。そんな重い空気を動かしたのは、霧切さんだ。彼女の言葉をきっかけに、私たちはその場から動くことにしたのだった。

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