衝動的と明確な意志



人は簡単に死んじゃうけどね、『殺そう』って思って『殺す』のには労力がいるんだよ。

何日も冷静に『あいつを殺す』って考えても行動に移すには覚悟が必要なんだよ。
だってやっぱり最初は怖いもんね、慣れてくれば話は別だけど。
それが『殺す』ってこと。

その場でついカッとなって相手を殴ったら動かなくなっちゃったとする。
これが『殺しちゃった』だよ。
何も考えてない分まだ気は楽だね。

要するにこの2つの差異は覚悟があるかないかだよ。



モノクマはそう言っていた。そう、あのコロシアイの始まりの日から大分日にちが経った。舞園さんが殺され、江ノ島さんが殺され、桑田くんが処刑された。3人の犠牲者を出しても皆は脱出することを諦めていないようだった。……セレスさんを除いて。

舞園さんは明確な『殺す』という意識を持って、計画を立てていた。
桑田くんは殺す気はなかったが殺されそうになって、ついカッとなって舞園さんを『殺してしまった』のだ。それがあの二人の違い。こうして第一回目の学級裁判は幕を下ろしたのだ。

「何だか、本当に大変なことになったよね」

そう言って暗い顔をしているのは苗木誠。気が付けば、私たちは共に行動するようになっていた。霧切さんと、苗木くんと、私とで。霧切さんとは元々、中学の時からの知り合いだったし。苗木くんとは、初めて会った気がしないということで、何となく互いに信頼している感じだ。
今は苗木くんの部屋で、二人で話しをしていた。あんな事があったばかりだし、一人では心細かった。私は、苗木くんに抱きついた。

「えっ、えっ……? 綾咲さんどうしたの? な、何かあった?」

「あんまり可愛いから、つい衝動的に」

「えぇ!? ボクは可愛くないし、ついって何!? 衝動的に、で人に抱き付いたりしたら駄目だよ! いや、衝動的にじゃなくても駄目だから!」

彼の反応が可愛いものだから、ついついこうしてからかってしまう。最近の私たちの関係はだいたいこんな感じ。いつも私が苗木くんを振り回している。

「……本当は、苗木くんがちゃんとここにいるかどうか、確認したかっただけ」

「ええ!? えっと、そう……ですか、」

そう言うと、苗木くんはそわそわしながらも少しだけ抱き締め返してきた。

「……ボクはちゃんとここにいるよ」

暖かい。ちゃんと生きてる。それを実感して、私はほっと胸を撫で下ろす。

「うん。たまに不安になるんだ」

「うん……こんな状況だもんね。わかるよ。……ボクも、綾咲さんが誰かに殺されてないか、明日にはいなくなっているんじゃないかって心配になるんだ」

「私も、ここにいるよ。明日も、明後日も……」

「そうだよね。綾咲さん、諦めないでね、きっと皆で出られる日が来るから」

そう言って、苗木くんは強く抱きしめてきた。

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