名前



「ねえ、召使いさん。そろそろ名前教えてくれない? 召使いさんって呼びづらいんだけど」

「教えたとしても、なんかしっくりこないから召使いさんって呼ぶ……って返されそうな気がするんだけど(……名前教えたくらいじゃ思い出したりしない……よね?)」

やっぱり召使いさんとは以前からの知り合いなのだろう。なぜ彼はそんなにも隠したがるのか。

私は、知りたい。

「教えてくれないなら二度と話しかけないだけだからそれはないよ。心配しないで」

「……何でそう極端なのかな……」

私と話せなくなったって構わないなら、このやり方は効果的ではない。

「……凪斗」

だけどため息をついたあと、やや間があったが彼はやっと教えてくれた。彼の名前を。

「……狛枝凪斗だよ、ボクの本名。嘘はついてないよ、どうせ偽名使ってもキミはすぐ見抜くでしょ?」

「あっそう」

「何か泣きたくなってきた。凄いよメイドさん、ボクもう10年近く泣いてないのにキミのせいで涙が出そうだよ」

「泣いてもいいのよ」

ワクワクしながら言うとげんなりとした様子で彼は性格悪いなぁ……と呟いた。

「うそうそ。じゃあこれからは狛枝さんって呼ぶね」

「うん、どうせならそう呼んで(何だか懐かしいな。記憶も戻らなそうだし、これはこれで良かったかもしれない)」



狛枝凪斗。

私は、その名前を知っている気がした。

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