船長の部屋



「ようこそ、俺の部屋へ」

「……!」



部屋中に置物や宝石が溢れ返っていた。
所々に高そうな酒瓶も置いてある。
全部奪ってきたものかしら……?



「そんなに緊張するなよ。まあ、適当に座れ。ああ、ベッドの上でもいいぞ?」

「あら、それは気が早すぎません?」

「ハッハッハ、なんだ?シャワー先に浴びとくか?」



リュウガがいきなりアユミに顔を近づける。
かなりお酒臭く、アユミは顔をしかめる。

これは相当飲んでるわね……。



「いきなりオレの部屋で寝たいと言い出すとは、面白い女だな」

「ねえ……」

リュウガ「うん?」

「名前はなんておっしゃるの?」

「……なぜ、そんなことを気にする?」

アユミ「あら、私はシリウスの一員になったんでしょう? 船長の名前も知らないんじゃあ可笑しいじゃない」



一瞬訝しむように眉根を寄せるリュウガを見て、アユミはおねだりするようにリュウガを見つめる。
さすがに船長なだけあって、一筋縄じゃいかなそうだ……とアユミは内心計算する。



「……オレは、リュウガだ。この辺りじゃちょーっとばかり知られてる名前だな。俺はなあ……海賊王ってやつだ」

「海賊王……」



確か、前にヤマトの酒場で聞いたことがある。
たった一人で部隊一つを壊滅させたって。
私、思ったよりも凄い所に来ちゃったみたいね。



「ねえ、あの港町に……ヤマトに向かうことはどうしても無理?」

「ん?悪いが、その相談にはのれないな」

「それはどうしてかしら?」

「この船はある場所を探して航海中だ。引き返している暇はない」

「そう……」

「その交渉をするためにオレの部屋を選んだのか?」

「……あら、鋭いのね。その通りよ」

「ほう……。顔に似合わず、なかなか計算高い女だな」


リュウガはアユミの顎を掴み、顔を上げさせた。
そして怪しげに目を光らせると、アユミの耳元に口を寄せて低い声で囁きかける。



「このオレと交渉したいっていうんなら、それなりのことをしてもらわなきゃな」

「……それなりのことって?」

「覚悟してきてるんだろう? どんな風にオレを誘ってくれるんだ?」

「いいけれど、ただではあげないわ。私のお願いを聞いてくれる殿方でないと、ね」

「お前の態度次第で、考えてやってもいいと言ったら?」



酒の匂いを漂わせながら迫ってくる相手に、アユミは眉を顰める。
……まさか、無理矢理襲う気!?



「ぷっ……はっはっは!」

「え……」



「くく、お前、顔が真っ赤だぞ。なに本気にしてんだ。お前みたいなガキに手を出すほど女に飢えちゃいねーよ」



リュウガは自分よりも一回り小さなアユミ相手の頭をポンッと叩くと豪快に笑った。
馬鹿にされたように感じ、アユミの頬がカアッと熱くなる。

っ馬鹿にしないで……!
上げようとした声は、ノックの音に塞き止められた。



「船長。飲み直しませんか?」

「ん? ソウシにハヤテか。残念だな。いいトコだったのになあ?」

「どこがよ。いい加減なこと言わないで頂戴」

「ハハハ!ソウシ、いい酒を持ってきたんだろうな?」

「もちろん。ヤマトの最高級の酒ですよ」

「なんでオレまで……オレもう十分飲んだんですけど……」

「まあまあ。飲むなら大勢の方がいいじゃないか」



ソウシとハヤテが話している間にも、船長は早速ボトルの蓋を開け始めていた。
そのままアユミに視線を向けると酒瓶を差し出して豪快に笑う。



「アユミ、お前もどうだ?」

「私は結構よ」

「ガキくせー女にそんな上等な酒なんてやる必要ないだろ」

「それ、私の店にあったお酒なんだけど」

「船長の相手はしておくから、安心して眠りなさい」

「え……」



道着を着た男、船医のソウシがそっと耳打ちをする。
その言葉にアユミは意外そうに相手を見やり、勧められるままにベッドに潜り込む。

柄の悪い奴らばかりかと思ってたけど……このソウシって人は優しいみたいね。
海賊にはとても見えないのだけど……。

リュウガ船長たちは酒盛りを始め……アユミは次第に眠くなってきていつしか深い眠りに落ちていった。

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