Walkure


帰り道





帰り道


ワンライ再掲。若干の吐血表現有


嫌いな女を殺した。私の好きな人を、鼻で笑って馬鹿にするような女だった。人の恋路を踏みにじっておきながら、彼女自身は幸せな恋愛をしているのが、許せなかった。だから、毒を盛って殺した。

「随分と派手な死に方じゃない、こんなに血を吐いて」
「私にとっての毒は、毒で抹消したかったの」
「あなたらしいと言ったら怒られるかしら」
手袋を嵌め、遺体を運ぶ。先刻まで私の前で食事をしていた女は、今となっては単なる肉塊となり、腕全体に、重く冷たくのしかかった。あらかじめ庭に掘っておいた穴に遺体をどさりと投げ込むと、月明かりが女の頬を青白く照らした。
「いい気味ね。この子の彼氏がこの光景を見たらどんな気分になるんだか」
「真依も案外乗り気じゃない」
「名前を泣かせるような女は私も嫌いよ。ほら、見つからないうちに全部埋めなきゃ」
幸か不幸か、私たちは死体を処理することに恐ろしいほど慣れていた。それでも意図的に誰かを殺(や)るのは初めてだから、終始無言で、でも明らかに興奮していて、二人の息遣いと土の匂いが充満して、むせそうなくらいだ。
「本当にこれで良かったんだよね?」
「良かったも何も、全部あなたが決めたことじゃない。私は手伝っただけよ」
真依は平然と答えるだけで、表情からその心は読み取れない。ただ分かるのは、私たちが共犯であること、ただそれだけだった。
「ほら、ばれないうちに帰るわよ」
真依ちゃん、あのね――女をこの世から抹消してから、真依に伝えたかったことがある。だけどその前に、帰り道のこの時間に少しだけ、共有した罪の味を、噛み締めさせてね。






- 8 -

*前次#


ページ: