爆発!白亜紀大絶滅!


およそトカゲのような形をした我々の原型たる祖先の標本を眺めて、気が遠くなる太古の世界に想像の手を伸ばす。
月の裏側、天の川の向こう、宇宙の果て。

「こういうの見てると本当に自分ってちっぽけな存在だと思うよねえ、蛍くん」
「全体的に見たら僕たちの一日一秒なんか塵芥以下なんだから気にしなくていいんじゃない?」

私の問いかけに、隣で年表を眺めていた蛍くんはいつものように鼻を鳴らして笑った。

「そのうち人類なんて滅びるんだから」
「そんなすぐ滅びないよ。隕石が落ちない限り」

私は年表の終わり、白亜紀の隕石による恐竜大絶滅——種の末路を表したイラストを指差して、そのニヒリズムを打ち消そうとした。彼は時折冗談っぽく皮肉を並べることがあった。
博物館の特別展に行こうと言い出したのは蛍くんの方だった。

「嫌なら別に来なくてもいい」———お決まりの予防線を張って、彼は30センチも眼下の私を見下ろした。
高校三年の冬が終わりつつあった。まだ冷たい風が切ったばかりの髪の毛先を揺らす季節になって、私たちは三年間過ごした学舎を後にした。

蛍くんは地元に残り、私は東京の大学に進むことが決まっていた。お互い進学や引っ越しの準備で春休みを忙しなく過ごし、気づけば三月も終わりに差し掛かるような頃合いだった。

遠距離恋愛は辛いから別れてもいいんだよ、と私が言うとわざわざまた新しい恋愛なんて面倒くさいから嫌だと彼はいつも眉間に皺を寄せた。遠距離恋愛の方がどう考えても面倒なのに、それを愛情の裏返しと受け取るくらいには自惚れても許されるのだろうか。

「今、楽しい?」
「なんでそんなこと聞くの」
「今が楽しければ、砂みたいなちっぽけな瞬間でもそれはそれで良いんじゃないかと思うんだよね」

平日の博物館は人がまばらだった。彼の好きな恐竜の原寸大骨格模型の前に置かれたベンチに座って、私たちは貴重な時間を対話に費やすことにした。

「まあ、そういうおめでたい考えもあるよね」
「また照れちゃって」
「……ウザい」

捻くれ者の彼の言うことが表なのか裏なのかすぐ分かるようになったのも、気が遠くなるような時間のうちの、塵芥の積み重ねだろう。

「大学卒業したらさ、仙台に戻ってこようと思うんだよね」
それまで、ちょっとだけ待っててよ。
私がそう言えば、蛍くんは

「……人間の体感時間は年々早くなるとはいえ、一応四年あるからね」

そっぽを向いてそう嘯いた。

「素直じゃないねえ」
桜前線はまだ来ない。





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