突然に始まった工作の時間。
材料は?と聞けば、買いに行こう、と言われて向かったのは、布屋さん。色々な色や触り心地の布がたくさん並んだお店の中はとても興味深くてきょろきょろと周りを見渡してしまう。走り出しそうになるが、両手はしっかりとしーちゃんとぴょんに握られていたのでできなかった。
そこで買ったのは青色の布と緑色の布。晴れの日のお空みたいな薄めの青、深い海みたいな真っ青、それとこおむの瞳によく似た青……種類の違う青をいくつか選んだ。
はぎれ、という部分から選んだからお小遣いでも買える範囲のものでお金はボクの斜めがけしている猫型のポシェットの中から出した。
プレゼントの為にお金を使うのはこれが初めてだ。喜んでくれるかな?と、とてもドキドキとしながらお会計をした。布が入った紙袋を両手で受け取れば大事だからそのまま胸の前で持っておく。
材料の調達が終わったら今度は工作の時間。
向かったのはしーちゃんのお家。ぴょんのお家は散らかっているから駄目だってことになった。残念だ。ぴょんのお家は宝探しが出来るから楽しいのに……。今度遊びに行こう。
しーちゃんのお家は綺麗だ。いつ来ても物はきちんとした場所に収まっている。物があまりないのも一つなのかも知れない。
「んじゃ、作り方説明するぞ」
「はーい」
「ボクはおやつを作っておきますね」
「「わーい」」
「ゼン様……」
「紫闇のおやつ、私好きだぞ。メープルたっぷりのクッキーとか大好きだ」
「ボクも。ボクもしーちゃんのクッキーすきー」
しーちゃんは料理上手だ。色々なメニューを作ってくれて、どれも美味しい。クッキーもマフィンもおはぎも大福も……どれも美味しいんだ。しーちゃんは台所へと向かっていき、今日のおやつを用意してくれるらしい。
「じゃ、まずは切るぞ」
「はーい」
まずは青い布を丸く切っていく。切った先がギザギザになるはさみでちょきちょき……丸く切る、というのは難しい。綺麗な丸になるように慎重に、慎重にはさみをちょきちょき……
花びらになるように真ん中に向かってちょっきんっ。とはさみをいれる。
針でぬいぬい。先の尖っている針は間違って指を刺しては痛いし、こおむへのプレゼントに血がついてしまう。青い色に赤が混ざればそれはこおむの好きな色だが……そんなのは嫌だ。
丁寧に、ひと針ひと針を薄い布へと通していく。
「んで、ここをこうな」
「ぅ……こっち?」
「そうそう。琥珀は手先器用だな」
三色の青を重ねた一輪のカーネーション。花びらは8枚。茎に見立てた緑色の針金を手に持ちくるりっと指先で回して、落ちたりしないかも確認する。
最後の仕上げにぴょんがブローチにできるように、と金具を付けてくれた。葉っぱの向きはボクに決めさせてくれた。
「ありかと、ぴょん」
「はいよ。ってかぴょんはやめろ」
「でも、ぴょんはぴょんでしょ?」
「そうだけど、ね……ま、一応だ。一応」
完成した青いカーネーションのブローチ。綺麗な花びらを作れたことが嬉しくて、尻尾はゆらゆらと満足げに動く。
綺麗に出来た。
気に入ってくれるかな?
ドキドキ、ソワソワ……
出来上がったブローチを眺めながら考えるのは受け取る大切な人の顔。
ビックリしてくれるかな?
ボクが作った、って言ったらどんな顔をするんだろう。
考えれば考えるほどにソワソワとする気持ちはつのっていく。渡すまであと2日。
その2日間をボクはソワソワと過ごすことになる。
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とある弓士のお話