クリスマス(図書大時代)
〜図書大時代〜
「俺達と一緒にいたほうが楽しいって」
「いいお店知ってるよ?俺達!」
イルミネーションの光が街を彩り、家族や友だち、恋人はたまた仕事帰りなど様々な人たちがあるっているのを横目で見る。今日は聖なる夜。別の言い方すれば、イエスキリストの誕生日とでも言うのが正解だろうか。そういえば、今日天気予報ではホワイトクリスマスになる可能性があるとモコモコのあたたかそうな服をまとったお天気お姉さんが言っていた気がする。
「寒いしさぁ、お店で暖まろうよっ」
「そーそー」
そうだね、あたたまりたいよ。あんた達がいなくなってくれれば自販機で飲み物買って温まるんだけどね!?
私とてただ立っていたわけではない。待ち合わせのために寒い中いるわけだが、待ち合わせ時間は19:00。しかし、現在の時刻19:30。待ち合わせの相手からは先ほど連絡がきた。教授(40代男性独身)に私と出かけるのを勘づかれ、雑用をおしつけられたというものだった。普段は面白い人だが、こういうことに関しては人が変わる。最早、ドンマイとしか言いようがないので申し訳なさそうな文章に対してそう書いて送ってやり、大人しく待つことにした。
のだが、どういうことだ。これはなんだ。肩を叩かれたと思ったらニヤニヤした男が2人。それで、今に至る。
しかし…暇なのかなぁ……暇なんだろうなぁ。私に話しかけるとか…一切反応してないのにずっと話しかけてきている。
「ね!ということで、行こっか!!」
ガッと突然腕をつかまれ引っ張られそうになる。なんだなんだ!?何がということで!!??
『いや、意味わからないんですけど…というか待ってる人いるから!』
「えー…でもずっと来ないじゃん」
「そーそー!そんなやつほっといて俺達と行こーぜ!」
…いい加減しつこいなぁ!!
背負い投げでもしてやろうとした時「おい!」という声と同時に後ろに引っ張られる。倒れると思い、目を瞑るとトンとあたたかい何かに支えられた。『え?』と顔を後ろに少し上げると、教授に雑用を押し付けられていたであろう待ち人、そして私の恋人である堂上篤が物凄い怖い顔をして男達を睨んでいた。
…殺せそうな目してんなぁと人事のように思う。
「んだよ!男いんのかよ!!べっべつに何もしてねぇよ!!なぁ!?」
「おっおう!!ちょっと道聞いてただけだよ!!」
そういうとそそくさと去っていった。面白いなぁと後ろ姿を見ていると少し上からため息が聞こえたので振り返る。
『お疲れ様、思ったより早く終わったんだね』
「おう…じゃなくて!早く終わったんだねじゃないだろ!何ナンパされてんだよ!!」
『えー…私のせい?』
「そっ…ういうわけじゃ……」
『初めてだったからね、結構観察してて面白かったよ?』
「はぁぁああ…もういい。元はと言えば、俺がつかまって遅くなったのが悪いからな。悪かったな、冷たくなっちまってる…」
そういうと私の頬に手を当てる。外は寒いのにあたたかい…よく見ると、彼の顔にはうっすら汗が浮かんでいるし息も若干あがっている。
『ううん、大丈夫。
それより、汗ふいて?冷えて風邪ひいたら困る』
そう言いながら、カバンからタオルを出すと悪いといいながら受け取った。
「じゃあ、行くか」
その声を合図に歩きだそうとする堂上の腕に自らの腕を絡めた。
「!!おっ、おい!」
顔を真っ赤にしてはなそうとするのでもっとくっつく。
『こういう特別な日ぐらいたまにはいいじゃない?いやなら離すけど』
「嫌とは言ってないだろ!」
冗談だよっと笑って返すと、眉間に皺を寄せた。そして、本当によかったのか?と急にボソッと言い出したので何を言っているか分からないという表情をすると読み取ったのかだから!と少し大きな声で言った。
「せっかくクリスマスなんだからいくら親が来いって言ったからって、俺ん家じゃなくてどっか出かけたりとか…」
『え?何で??パーティ一緒にしないかって呼んでくれたんだよ?こんな嬉しいことないでしょ!』
怒られるならまだしもさぁそれに、いい加減私も挨拶しないとねと言うとまたため息をつかれた。何なんだ。
「たっく…本当俺より男前だからなぁ」
私の頭に手を伸ばすとクシャっと撫でた。
『そういう彼女はお嫌いで?』
「アホか」
ギュッと手を繋ぎ、堂上家に向かうのだった。その時空からは白いものが舞っていたとかいないとか。
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