視線の意味

※サンダークラッカー成り代り夢







私ナマエは、現在第2の人生を歩んでいる。
しかも、初代TFの世界で、サンダークラッカーの生まれ変わりとして。

前世の終わりがどうだったのかは覚えていない。
あまり真面目な人間じゃなかったから、きっと碌でもない最後だったんだろうと思う。

まぁそれはどうでもいいんだけど、ここがTFの世界で、知り合った人達のほとんどが記憶にある人物であって、何より「私」という人格があること。
この事実が前世で学習した、所謂転生トリップだというやつだということを理解したのは、勧誘されてデストロン軍に所属してからのことだ。
…自分でも気づくのが遅すぎたとは思う、まる。

いやしかし何より特筆すべきは、トリップとは、前世で楽しく想像していたよりも厄介でタチの悪いものだってことだ。
サンクラに生まれ変わったせいか、前世よりもっと日和見主義と化した私には未来を変えるだのなんだの大袈裟な出来事をする覚悟を持てない。
だが、私は未来の出来事を知っている。
そしてそれを怪しんでいるであろう人物が、近くにいるのだった。

「コの作戦をドウ思ウ?サンダークラッカー」

サウンドウェーブは私ひとりを会議室に残してはよく作戦の相談をする。
中には知っている作戦のものもあってヒヤリとする時もあるけれど、今回はアニメで放送されている部分ではないらしい。
初めて目にする施設の名前が書かれたデータパネルを渡されて、ちょっとホッとする。

「どうって…よくわかんねーけど、いい作戦なんじゃねぇんですか?」

残念なことにあまり深く考えることが得意ではない私は、なにやら小難しい文面の並んだデータパネルを縦読みして適当に返した。

ちらっと情報参謀様の顔色を伺えば、じっと私の(いやサンクラの?)顔を見ている。
もうそりゃあ穴が開くんじゃないかってほどに。
もしかして、一瞬でもホッとしたことがバレちゃった!?

「な、なんですか…」

「イヤ、何でもナイ」

プイ、と顔を背けたかと思うと、そういって私の手の中のデータパネルをひったくると会議室から出て行ってしまった。

やっぱり私、怪しまれてる…。
もっと慎重にならないとマズイかもしれない…。



********

ふぅ、と哀愁漂う排気音を漏らして会議室から出てきた情報参謀の雰囲気はどこか暗い。

以前はからかってばかりのスタースクリームだったが、ここ何千回と敗戦を重ねる男に、最近はアドバイスまでくれてやる程だ。

「だからさ、ナマエにはストレートにガツーンと言ってやらねぇと伝わらねぇってんだろ?」

まぁなんとかあの鈍感振り向かせろよ、と肩を叩いて去っていく同僚の背中を眺めて、もう一度排気した。

ちょうどそのタイミングで会議室のドアが音を立てて開いた。
とっくに去っていたと思っていたのだろう自分の姿を見て、ナマエは驚いたように小さな悲鳴をあげる。

スタースクリームに唆されたからではないが、やはり何か行動ぐらい起こさなくては。



********

思わず立ち聞きすることになってしまったのは、悪いと思う!
誰を振り向かせるんだろーとかほけっと聞いてるんじゃなかった!!

けどいきなりこれはないんじゃないだろうか。
再び会議室に押し込められた私は、近くの壁に押し付けられた。
腕 両腕はしっかり押さえつけられたうえ、どんどん近づいてくる顔…。

うん、これはもうマズイ。
あまりの恐怖に私は両目をきゅっと瞑った。

「ナマエ…、何時になったら甘い瞳で俺をみつめてくれるようになるんだ?」

は?
甘い瞳?

しばらく自体を飲み込めなくて、思わず情報参謀サマの顔をぽけっと眺めていたら、何やら唇の部分に押し付けられた感覚がした。

そのまま背を向け去っていく上司の背中を暫く見つめた後先ほどの言葉や、今までの視線の意味まで理解してしまって、どうやら私は違うことに頭を抱えなくてはならなくなりそうだ。