恋は突然に
いつも基地でお留守番してる先生が、今日は外へ出かけてしまっているらしい。
つまんない。
急にお迎えがくるようになったミコを怪しんで後をつけてしまい、トランスフォーマーという異星人の存在を知ってしまった私は、以来ラチェットのパートナーとしてこの基地によく出入りしている。
ラチェットは他のオートボット達のように戦場に繰り出すことは殆どないから、バルクヘッドみたいにかっこいい武勇伝を聞けることもない。
いつもよく分からない器具をいじくりまわしているばかりだ。
でも、そんなラチェットの手つきを鑑賞するのは結構楽しかったりする。
もちろんバルクヘッドやアーシーのお話も面白いのだけど。
手馴れた様子で細かいパーツを繋ぎ合わせていく様子をただじっと見つめてばかりで、ミコどころかジャックにさえ面白いかと聞かれたことがあるけど、
「先生は私のパートナーだから」
とちょっとトンチンカンな返答をしている。
でも私のこの想いは、一方通行の片想いなのだ。
ラチェットは、お迎えなんてきてくれないし、手のひらに乗せてお喋りだってしてくれない。
私は、ただ広い背中と、それ越しに忙しなく動く手を見つめるだけ。
それにラチェットは人間は苦手だって言っていたし。
本当は、先生、なんかじゃなくてちゃんと名前で呼んでみたい。
ラチェットにも、私のこともっと見てもらいたい。
「それさ、もう恋だよ」
ラチェットがいないのをいいことに、思い切ってミコに相談してみたのはいいけど。
「だってさ、ラチェットのこと考えたりすると切なくて苦しくなっちゃうんでしょ?
そしてそしてナマエはラチェットに触れて欲しい!
これって立派に恋じゃん!」
「ち、違うよ!触れて欲しいとかじゃなくて、ただミコとバルクヘッドみたいにパートナーらしくしたいだけっていうか…!」
言ってから、パートナーらしさってなんだっけと思った。
私はラチェットの視界に入りたくて、あわよくばその手に乗ったり…あぁ、やっぱりこれって、私ラチェットと見つめ合いたくて触れ合いたいのかな!?
あーもー、だんだん頭が混乱してきた!
「と、とにかく!私はラチェットのことが好きなんだよ!」
叫んでから、しまったと思った。
だって、ミコの向こう側にちょうど帰ってきたばかりの先生が。
ポカンとした顔でこちらを見つめている。
そしてふにゃ、と笑ったかと思うと私たちの方へ近寄ってきて、私をすくい上げた。
「ナマエ…その、私も、君のことが好きだ」
「え、だって先生人間なんて苦手なんじゃ…」
「そのことなんだが…」
先程まで不在だったのは、パートナーとしての距離の取り方をアーシーに相談していたから、らしい。
人間が苦手と言った手前パートナーだからと急に距離を詰めるのもと悩んでいた先生は、話していくうち恋だという結論に至ったらしい。
「今までは遠慮していたが、君とは両思いだと分かったからにはこれからは遠慮しないよ」
そういって微笑んだ先生に、心臓がやかましく鳴り出す。
この瞬間、ラチェットのことがLIKEじゃなくてLOVEで好きだと思った。
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こんな恋の始まり方もいいんじゃない。