受信

宇宙に浮かぶちゃちな衛星をハッキングし、その星に住む知能生命体達が「地球」と呼ぶ星の観察をはじめて、1つだけサウンドウェーブには楽しみな事ができた。

殺風景な部屋に取り付けられた監視カメラの映像。
そこから聞こえる、微かな歌声。

サウンドウェーブは、彼女のその憂いを帯びた表情で口ずさまれるその歌が密かにお気に入りだった。
決まって部屋で独りきりのときだけ、小さく掠れた声で部屋の外に声が漏れないように紡がれる歌詞はいつも暗い内容のものだった。


深い闇が広がる宇宙の中で、接続した衛星から聞こえる地球の音はよく響く。
ガヤガヤと騒がしいカメラ映像の中でただ一つ、暗がりの部屋はいつも通り少女がひとり佇む様子はただ静か。
いつもはそこに彼女の歌声が聞こえるだけのはずが、ふいにドアの開く音と別の声が混じってきた。
不快な音だと思った。

「ナマエ」

小太りの男が放ったその音は実に不快で、一瞬サウンドウェーブはその音声だけOFFにしてしまおうと思ったが、人間達の観察という任務上、そうするわけにもいかず暫く様子を見る事にした。

どうやら、不快な男は彼女の父親というものらしい。
彼の話は彼女の母親がどんな素晴らしい人物であったかに始まり、母親との思い出、彼女のあるべき姿へと話は移っていく。

別のカメラに映る家族が寄り添いあって笑顔であるのを理想の家族とするならば、成る程この家族はだいぶ歪な関係らしい。

彼女はいつ観てもその部屋にいたし、父親である男の演説めいた母親の話は週に1度行われている。
それ以外でその部屋に訪れるのは、小さな老婆が飯の手配と掃除に訪れるだけ。
この老婆は母親ではないことは、住民名簿から確認済みだ。

そして、ナマエの母親は死亡しているこも。


地球の監視を始めて1ヶ月ほど経った頃の、父親の演説の終わった後。
無表情だったナマエは、やがて重く長い溜息をつくと、僅かに顔を歪め、俯いた。
やがてボタボタと目から溢れ出したそれを、涙というのだということは既に他の人間から情報を得ていた。

嗚咽の合間から溢れるのは、あの物悲しい唄。

「誰か本当の私をみつけて」

とぎれとぎれに紡がれた詩は、きっと彼女の切なる願いなのだろう。
今にも消えそうなか細い声で、それでもその部分だけはしっかりと音に乗せて。

彼女以外の人間には、決して耳に届けてはならない歌はしかし、遠い宇宙に浮かぶ金属生命体の耳にしかと届けられていた。

あの静かな部屋はこのだだっ広い宇宙空間に似ている。
そう思った時にはメガトロンへ地球着陸のメッセージを送信、地球の引力に吸い込まれていた。


そしてその日、ナマエの家の庭には大きな隕石が落ちることになる。




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仕事放棄する情報参謀
このあと人間を飼いたいがために地球に残るとダダをこね出します