#07
The Past最終学年になる頃には、弟への暴力も収まっていた。なにより、自分を認めてくれる人が増えたのだ。
「俺、青道に行く」
父と弟はなにも言わなかった。父は、昔から自分の好きなことをやったらいいと背中を押してくれたから、青道に行くことも反対ではないのだろう。
では名前は?名前はどう思っている?少しは寂しいとか、思ってくれているのか。
中学生の男子というものは、第二次性徴期とも言われるほどに、性に関心を持つ。俺も例外ではなく、日に日に弟への思いが強まっていく様だった。それでも、実の弟に手を出したらシャレにならないので、常我慢しているのだが、たまにその欲求が爆発しそうになる。
今もだ。名前が、俺と少しでも離れるのが寂しいと思ってくれてるかとか、名前は俺のことどう思ってるのだろうとか。名前をどうにかしたいという欲求より、自分のものにしたいという独占欲の方が激しかった。
夜、弟の部屋へ向かった。
自分の青道行きにどう思っているのかを聞きに。
小さく二度ノックすると、どうぞと声がかかり部屋を開けた。弟はベッドの上で漫画を読んでいる様だった。
「兄貴、どうした?」
弟は起き上がると、床に座った。俺も弟と対面する様に座り、口を開いた。
「いや、俺の青道行きどう思ってんのかなと思って」
「いいんじゃない、頑張れよ」
「そういうことじゃなくてさ」
「なんだよ」
弟の目を見やる。俺と同じ色の瞳だが眼鏡はかけていない。
「お前はいいのかよ」
「なにが」
「……いつも自分のやりたいこと我慢して、俺と親父ばっかり優先させやがる!少しは自分のことしたっていいだろ!」
弟の飄々とした態度にいらいらした。違うんだよ、そうじゃなくて。少しは俺にわがまま言ってくれよ。
「俺、中学卒業したら父さんの仕事手伝うわ」
「は?高校行かないのかよ」
「うちにそんな余裕はない。それよりも少しでも父さんの負担軽くしてやりたい」
弟の真面目な回答にカッとなり、胸ぐらを掴んだ。
「なんでお前はいつもそうなんだよ!親父はそんなこと反対してるんだろ!」
「好きにしろって言われた」
「チッ!ふざけんな!」
俺よりよっぽどできた兄の様だ。俺ばっかりやりたいことやってきて、こいつにはそんな余裕ないっていうのかよ。
「兄貴は俺にどうして欲しいんだ」
弟はいつまでも冷静だった。自分だけ子供の様に喚き、弟を罵倒しているのだ。
俺はスッと手を離した。弟は重力のままに尻餅をつく。弟の手を引っ張って、ベッドに押し倒した。弟の上にまたがり、弟を見下ろす。
「……っ」
流石に俺がこんなことすると思ってなかったのか、弟は驚いた様だった。
「……兄貴?」
「俺ってお前の兄貴だろ」
今更って感じだけどな、と続けふっと笑う。
「お前にどうして欲しいとかじゃない、俺がお前をどうにかしたい」
弟の返答も聞かずに、その唇に口付けた。
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