ヨリ
趣味の合う女子だった。そして向上心のある女子だった。自分が好きな事を好きになってくれ、更にはそれについて詳しく勉強してくれるのだ。自分にはもったいないくらいのいい女だった。だが、自分は過ちを犯した。彼女がいるにもかかわらず、他の女にうつつを抜かしたのだ。浮気がばれないと思っていたわけではなかった。しかし、彼女との"恋のカタチ"に違うな、とも思っていた。自分を好きでいてくれる事は嬉しい事なのだが、好き好きとアピールをしてくる女子より、自分が好き好きとアピールをしたいのだ。変な性癖だと自分でも思った。
大切なものは失ってからどれだけ大切か気づくのだ。浮気をしたその日、彼女に別れを告げられた。ヤケになっていろんな女と付き合ったが、どれも違うと思った。つまりは元カノが恋しい。自分の過ちを許し、またヨリを戻してほしい、と真田は考えていた。
(あー、名前……)
斜め前の席を見やる。小柄な女子は黒板に向いたまま。自分に振り返る事はない。
頬杖をついてぼうっと眺める。この華奢な体を、何度この腕に抱いた事か。
(好きだ)
失ってから気づくのだ。
真田は溜息をついた。幾ら自分がまだ彼女を好きでも、彼女は自分に振り向く事がないのだから。


練習終わり、近くのCDショップに寄った。Clean Bnditの新しいアルバムを買うために。
洋楽コーナーに向かい、目当ての物を見つける。それを手に取ろうとすると、反対側からも手が伸びてきて、タイミングよく同じものを掴んだ。
「「あ」」
パッと手を離した。相手を見やるとよく知った人物だった。
「名前……」
「俊平……」
まさかこんな時間にここで会うとは。久々に聞いた名前の声に真田は気持ちが高ぶっていた。
「それ買うの?」
「うん、しゅ……真田も?」
「あー、前みたいに俊平でいいよ」
「いやだって私たち」
付き合ってないじゃん、と続くであろう名前の口を手で塞いだ。
「な、それ買ったらちょっと話さねぇ?」


お互いに目当てのアルバムを買うとそこから近い公園に寄った。
「で、話って?」
「ま、いいから座れよ」
真田はベンチに名前を促す。名前が座ったのを見届けると、自分もその隣に腰かけた。
「ちょっと、近くない?」
「いいのいいの」
「何がいいのよ」
名前は、はぁと溜息をつく。そんなところも昔と変わらない。
「あのさ、」
「なに?」
「ヨリ戻さねぇ?」
「は?」
名前は目尻を釣り上げてこちらを見た。
「そもそもアンタが浮気したから別れたんじゃない」
「うん、ごめん」
「ごめんで済むとでも?」
「……ごめん」
真田はそれしか言えなかった。
「無理、今さら」
「無理じゃないって」
「どこからそんな自信出てくるのよ」
「失ってから気づいたんだよ、名前じゃなきゃダメだって」
「……バッカみたい」
名前は席を立った。
「真田の過ちを許せるほど大人じゃない」
「それってさ、俺のこと本気で好きだったってことだろ?」
「アンタはそうじゃなかったみたいだけど」
キッと名前は真田を睨む。
「でも俺、他の女じゃダメだった」
「は?」
「長続きしないし、他の女が隣にいてもつい名前のこと考えちゃうんだよ」
「……知らないわよ、そんなことを」
名前は俯いた。
「なあ、ダメ?」
真田は立ち上がり、名前の前に立つ。顔を覗くと、目尻に涙が浮かんでいた。




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Clean Bnditのアルバムにはsymphonyという曲が収録されていますが、ウイイレのBGMにも使われている曲なので、真田なら絶対に知ってると思います。
ぜひ聴いてみてくださいね。

ちなみにこの後真田と主人公がよりを戻したのかは、皆さんのご想像にお任せします。
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