1.いつかのバレンタイン
2月14日という日は、全体的に女子が少ない青道高校でも盛り上がるのだ。

「あー、うるせぇ」
「チョコもらえないからって僻むな」
「てめぇもだろ」
同じクラスの御幸は休み時間の毎に、女子からの呼び出しだ。
「なんであんなやつ、野球しか取り得ないのに」
「僻むな、僻むな」
終ぞ悪態が漏れてしまう。御幸なんて普段野球しか興味ないのに、こういう時に限って浮かれるのだ。
「あー、腹立つ。チョコ食おう」
「は?なんで持ってんだよ」
「自作自演に決まってんだろ」
「寂しい奴……」
倉持に同情の眼差しを向けられた。
「言っとくけど、今ここで俺がチョコ食ってたらその隣にいるお前の方がかわいそうな奴だからな」
「なっ!!」
してやったり。倉持は目を見開いて、俺の手にあるチョコに釘付けだ。
「やらねーぞ」
半分包装を剥いたチョコバーをしっかり握りしめる。
「いや、食うし」
しかし倉持は想像をはるかに超える行動をとった。俺の手にあるチョコバーに顔を近づけて、そのままパクリと半分、持っていかれたのだ。
「はぁ!?」
「うめぇ」
「てめぇ、うめぇじゃねーよ」
残り半分となったチョコバーを見やる。
「返さねーぞ」
「……お前の腹のなかだろ」
致し方なし、と残りの半分を腹に入れた。勿論、ゴミは倉持に握らせた。
「お前らなにやってんの」
すると、呼び出しから帰ってきた御幸がなんとも言えない顔でこちらを見ていた。
「倉持が俺のチョコ食った」
「てめぇが男らしくねーことしてるからだろ」
「側から見たら恋人みたいだぞ」
御幸はため息をつく。
「そういう事はどこか他所のとこでやれよ」
「うるさい好きでやってねーよ!男の敵!」
「オラァ!」
「ぐっ」
御幸は倉持のタイキックによって成敗された。
「ナイバッチ倉持ー」
「ヒャハ!」
「……そういう所が恋人みたいって言ってるのに……」
ケツをさすり痛そうにする御幸の言葉は、俺と倉持には届いていなかった。
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