5.今日から記念日
「さみー」
高校生活3年目の冬が終わろうとしている。既に野球部は引退し、残すところ卒業のみとなった。
「今年もいろいろあったなー」
部活もそうだが、結局倉持とは3年間同じクラスだった。
「卒業したら離れ離れだな」
「ヒャハ!寂しいのかよ」
倉持は相変わらずのテンションで、俺の隣を歩く。
「まーな。なんだかんだでずっと一緒だっただろ」
素直な感想を述べると、だな、と倉持が呟いた。
「倉持は?寂しくねーの?」
「別に」
存外倉持の冷たい態度に、ひでぇやつだと返す。倉持は黙ったまま、歩き続けていた。
「なあ名前」
「ん?」
「俺はお前と離れるつもりねーけど」
「は?」
お前はどうなんだ、倉持は歩みを止めて俺に尋ねる。
「どういう意味だよ」
真意がわからなかった俺は質問を質問で返した。
「だから、一緒にいたいかっていう……」
「訳がわからない」
「あー!お前も鈍感な奴だな!」
「ちゃんと主語を言え!主語を!」
くそ!と倉持は不機嫌になりながらも顔が赤い。
「名前が好きだ!それ以外理由がいるか!」
「は?」
倉持の言葉にみるみる顔が赤くなる。あれ、今日こんな熱かったか?
「お前はどーなんだ!俺と一緒にいたいのか!?」
それは好きか嫌いかという質問だろうか?倉持は嫌いじゃないが、恋愛的には分からない。
「一緒にいたいと思うけど、恋愛的に好きかどうかは……」
「じゃあこうしてドキドキするか!?」
倉持はやけくそのように俺の唇を奪った。
「!!」
「どーなんだよ」
倉持は照れながら俺を睨みつける。意外にも鼓動は早まるばかりだ。
「や、俺ってホモだったの……」
顔まで熱くなりながら倉持を見やる。倉持はニヤッと笑った後、特徴的な笑みを浮かべるのだった。
「ヒャハ!両思いかよ」




ーー今日から記念日。



fin.
2018.11.2 anon.
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