いるはずのない人
パチっと姿現しの音ともに現れたいるはずのないひと。ここは彼の屋敷なのでいてもおかしくはないのだが、とうの昔に小さな赤子によってこの世を去ったはずだった。
「トム?」
「その名は捨てたはずだが?」
ニヤリと笑った顔に昔の面影はなかった。綺麗な黒髪も無くなってしまって、少し寒そうだ。
「ほんとうにきみ?」
「俺様を疑っているのか?」
彼は顔を歪める。その顔は昔のトムにそっくりだった。
「名前」
さあおいでと言わんばかりに彼は両手を広げた。たまらずその胸に飛び込んだ。
「トム!」
ガリガリに痩せてしまった体の抱き心地は良くなかった。冷たい体はまるで死体のようで、本当に生きているとは思えない。
「その名で呼ぶな。俺様は蘇ったのだ」
「ヴォルデモート」
ヴォルデモートと呼ぶと彼は嬉しそうに腕の力を強めた。抱き合っていたため体が温まったのか、彼が本当に生きてるようにようやっと感じた。
「お前はずっとここにいたのか?」
「いや、トムが消えてから魔法省の捜索が入った。その時は隠れていてある程度月日が経ってから君がいつでも戻ってこれるように綺麗にしといた」
「ふむ、俺様は名前を屋敷しもべにした覚えはないが?」
「死喰い人達は皆身を隠した。誰もここに立ち入ろうとするものはいなかった」
「ルシウスもか?」
「あいつは臆病だ。恐怖で君に従ってるだけだ」
「アブラクサスのようにはいかないようだな」
「アブラクサスは忠誠を誓っていたよ」
名前は右手をあげる。屋敷中のシャンデリアや蝋燭が光を付けた。
「ペティグリューは?」
「もうそろそろ着くだろう」
「あの汚いネズミを屋敷に入れたくはないな」
「俺様もそう思う」
トムは裸足で赤いカーペットを歩いた。まるでその感触を確かめているようだ。
「だが、奴は俺様を蘇らせた。死喰い人どものなかでまだ骨のある奴だろう」
「恐怖ゆえだけど」
「そう言ってやるな。なあ名前?」
「君が言うなら」
名前はもう一度トムを抱きしめた。
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