七夕2018
「七夕って知ってる?」「たなばた?」
「そうそう、遠い小さな国のおとぎ話」
「ふーん、どんな?」
「働かざる者食うべからず的な」
「へー、今のお前じゃないか」
無駄に広い屋敷の中に、小ぶりの枝を飾り付けなにやら書き込んだ紙をくくりつけている。その背中を見ながら、トム・リドルは苛立ちを感じていた。
「名前、その枝はなんだ」
自身の屋敷(新築)に謎の枝はなんとも不似合いだった。
「だから七夕だって」
「いいから働けよ」
一所懸命に飾り付けする姿は、普段真面目に働かないのでとても珍しい。トムの命令をいつも適当に聞き流すやつの態度として考えられなかった。
「お願いだから、真面目に働いてくんない」
「じゃあ、そうお願いしなよ」
「ハァ?」
名前はトムに紙とペンを握らせた。先程名前が枝にくくりつけていたような形の紙だ。
「それ、短冊っていうの。お願い事を書いて、あーやってくくりつけとくの」
「へー、それで?」
「どっかのお姫様が叶えてくれるんだって」
なんとも曖昧な。トムはそう思ったが、藁にもすがる思いで、短冊に願い事を書いた。
「なに書いたの?」
名前はトムの手にある短冊を覗き見た。
名前が真面目に働きますように
「うわー、トムってばお堅いなぁ」
名前がヘラリと笑う。それにさらなる苛立ちを感じ、「アバタ……」と死の呪文を唱えようとすると「うわー!!まった、ごめんなさい!今から行ってきます!!」と姿現しで一目散に逃げていった。
名前が出ていった部屋の中は、枝と、それに括られた一枚の短冊のみだった。仕様がないから、自分のもつけておくかと枝に近づくと、名前の短冊が目についた。そこにはトムの幸せを願って≠ニ書かれていた。
なんだかむずがゆくなったトムは、自分の短冊をその隣に括り、アクシオを使い、名前の部屋から、[たなばた]と書かれた絵本を呼び出した。
「ふーん、これがたなばたね」
ページをスラスラめくり、大体の内容を頭に入れる。簡易なラブストーリーは数秒でトムの頭の中に収まった。
「名前ってこのヒコボシってやつにそっくり」
最後のつぶやきは、誰にも聞かれず0時を過ぎた。
2018.7.7
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