Shall we dance
クリスマスのダンスパーティーには殆どの生徒がホグワーツに残った。ウィーズリー家も例外なく誰一人として帰るものはいなかった。勿論名前もだ。「おい相棒、まだお相手は決まってないのかい?」
右隣のフレッドは意気揚々に尋ねる。先程アンジェリーナとのペアを決めたからだ。
「うるさいな、フレッドには関係ないだろ?それに女子も女子だよ、団体で行動しやがって」
恨みがましく言えば、今度は左隣のジョージが言った。
「たしかに、女子ってなんでいつも一緒なんだ?」
ジョージにもまだペアは決まっていなかった。もうクリスマスパーティーが近づいてきていると言うのに、ペアも決まっていないなんて、きっと可愛い子はみんな取られてる。
「ふんふん、なら君達にいいアイデアがあるぜ?」
フレッドは得意そうに言った。
「時間がないから聞いてやらないこともない」
名前がそう言えばフレッドは待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「名前とジョージがペアを組めばいい!」
「なんだって?」
途端に名前は不機嫌になった。「誰が男と踊るか!」とも言っているが、ジョージは名前の口を塞ぐ。
「いい考えだな相棒。そうしよう名前」
ジョージが名前の顔を覗き込む。名前はぐぬぬ、とうなったが分かったと答えた。名前が肯定したのを見て双子はニヤッと同時に笑った。
クリスマスパーティー当日。
ホグワーツは例年以上の賑わいを見せて、誰もが美しく着飾っていた。フレッドの隣のアンジェリーナも普段クディッチでは見せないようなきらびやかさがあった。
「おいジョージ、名前はまだか?」
集合時刻はだいぶ過ぎている。これから四人で会場入りをしようというのに一人だけ揃っていなかった。
「わからない、道に迷ってるわけないよな?」
ジョージは辺りを見渡すがそれらしい人はいなかった。
周りの友人達がすでに会場入りを果たしてる最中、コツコツと小走りで近づくヒールの音があった。そちらを見やると「ごめん遅くなった」と言う美しい女性の姿があった。
「嘘でしょ……」アンジェリーナが絶句している中、「おいおい」とフレッドもびっくりしたようだった。ジョージだけそれにニヤリと笑い美しい女性に片膝をつく。
「Shall we dance」
気障っぽく決めれば、女性は赤面してジョージの手を取った。
拍手喝采。トライヴィザード・トーナメントの選手が入場すると、静かにクラシックが始まった。名前の美しく変身した姿に誰もが一度は目を奪われた。「あの子誰だ?」「あんな子いた?」「すごく綺麗だ」周りから飛ぶヤジに名前は赤面する。こんな姿に変身するんじゃなかったと後悔までし始めた。
「流石名前だ。僕の想像以上に綺麗だ」
名前と踊るジョージはそこら辺の女と踊るより誇らしげだった。
「名前が変身術得意なのは知ってたけどここまでとはな」
二人の隣で踊るフレッドも片割れの相棒を羨ましげに見ていた。
「ただ女に変身しただけなのに?」
名前がジョージに囁くと「自身の面影を残したまま異性に変身する能力に脱帽だ」と言った。
「名前、本当に美しいよ」
上から下まで穴が開きそうなほどジョージに見つめられる。踊りに夢中で気づかなかったが、踊っているうちにホールの端まで移動してしまったようだ。隣で踊っていたフレッド達の姿も今や人ごみに埋もれてしまった。
そこはライトのちょうど影の部分で薄暗い。皆ダンスに夢中なせいでこちらに気づかない。それをいいことにジョージは名前の体を抱きしめた。
「おい」
名前は唸るがジョージは離そうとしない。肩をポンポンと優しく叩けば、顔だけは上げてくれた。
「名前」
熱っぽく見つめられる。
恥ずかしさに顔を伏せれば顎を優しく掴まれた。
ジョージの顔が近づき、唇が触れる。名前は抵抗したが、敵わずキスは戯れるようなキスから深いものへと変化した。息が苦しくて、それ以上に胸が苦しくて無理矢理顔を背ける。ジョージは一瞬不愉快だと言わんばかりの顔をしたが、名前の眼に光る涙を見て、そっと涙を拭った。
「名前?怒ってる?」
両頬を優しく包み込み目線を合わせると「お前の気持ちがわからない」と小さく言った。
「ごめん、順番逆になっちゃったけど名前のこと好きだ」
名前は真っ直ぐなジョージの瞳を受けて、冗談なんかではないことを理解した。
「本気か?」
しかし、男同士という現実の壁を突きつけられて、名前は素直に頷けなかった。
「名前が男同士とか、そんなくだらないことを悩んでるなら、そんな事で返事をしないで欲しい。精一杯俺のこと考えてほしい」
ジョージは真剣な眼差しで名前を見やる。名前はそれを受け、頷いた。
「わ、わかった。考えとく」
「名前!」
ジョージは名前を抱きしめた。
「いや、まだ付き合うって言ってないけど」
「名前は絶対僕と付き合うよ」
ジョージは笑って名前の手を取った。
「さあ、踊りましょう。お嬢さん」
「お嬢さんって言うな……」
名前は頬を染めながら、ジョージの手を握りしめた。
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