ケリュケールの一矢
*****名前は長い抱擁の中でクロードの温もりを感じながらうつらうつらしていた。
「名前、眠いのか?」
クロードは腕の中の彼女を見つめながら、優しい声色で言った。
「ううん。それに、眠くても寝たくないの」
「何故?」
「今眠ったら、この夢が覚めてしまいそうで怖いの」
名前は腕に力を込めてぎゅっとクロードに抱きつく。その仕草にクロードは微笑んで、彼女の頭を撫ぜた。
「眠っても覚めはしない。名前の夢が永遠になるだけだ」
「本当?」
名前は自分より高い位置にあるクロードの瞳を見つめた。
「ああ、お前の夢は私が守ると言っただろう?」
クロードは両腕を解き、その手で彼女の両頬を包み込んだ。
「お前は泣き虫だな」
名前は泣いていた。ほろりほろりと悲しくもないのに、涙が溢れてやまない。
「ちがっ……、かな……し、く」
「いい。名前が涙を流すなら、私がいつでも拭ってやろう」
「うっ……ん!」
名前は泣きながら微笑んだ。
「今はもう眠るといい。お前の夢が永遠となるように」
クロードは額、目尻それから唇へと口付けた。
*
クロードは名前の心の番人が見せた夢を見た。どの場面でも名前は泣いていた。一緒に映画を見た時も、一緒に歩いた時も。しかしどの涙も悲しいという理由ではなく、嬉しさからくる涙だった。
「クロードは名前を助けたいの?」
心の番人の問いに当たり前だと答えた。
「あんなに幸せそうだったのに?」
「あの夢はまやかしだ」
「そう……」
心の番人は悲しそうな顔をした。
「名前は夢の中で眠りにつこうとしている。夢の中で眠ってしまったら2度と目覚めることはできないわ」
「何っ!」
クロードは心の番人の両肩を掴んだ。
「助ける方法は……」
「無いわ」
彼女は、クロードの手を払った。
「実態のない夢から、どうやって助け出すの……?」
彼女はまた悲しそうな顔をする。クロードは苦虫を噛み潰したような表情をした。
「ただ一つ、言えるとしたら……」
心の番人は、ベッドに眠る名前に近づき腰掛けた。
「夢意識では、あらゆる物事の行程を省くことができる」
そう言うと、すっと青い光を帯びて消えていった。
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