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さっきまでお互いに(名前が一方的に)言い合っていたのだが、リーチをかけて1巡したあたりからどちらも静かになった。運任せの勝負、なんて赤木は言ったけれども麻雀においては運も実力のうちだ。
河の捨て牌も既に3列になっていた。残すところあと20牌前後だろうか、名前は更に山から引く手が緊張してきた。
「ククク……緊張してるね、名前さん」
赤木は名前の手の震えを見抜いていた。リーチをしてしまうと手牌は動かせない。自分が欲しい牌が来るまでは、山から河へを繰り返さなければならないのだ。もし、自分の捨て牌で赤木が和了してしまったら。満貫8000点でもマイナス5000の負債。さらには場にあるすべての点棒は赤木のものとなってしまうため、自分自身でさえ危うい。
「流石、アンタは余裕そうね」
名前は赤木を睨みつけた。このサドンデスのような状況で、余裕をかましてられるのは赤木だからこそだ。
「名前さん、勝負はこれからだ」
そういうと赤木は山から牌をツモる。そして手牌を3枚オープンし、カンと宣言した。
「……悪運の強い奴!」
ここにきて、暗カン。中(チュン)4枚は赤木の右端に一列に並び、新しいドラがめくられた。ドラ表示牌は發(ハツ)。よって赤木の中4枚はドラ牌と化した。
赤木は嶺上(リンシャン)牌をツモる。そして白い悪魔はニヤリと笑った。
「嘘でしょ……」
名前は察した。赤木のその嶺上ツモはアガリ牌であることを。
「ツモ」
赤木は手牌を全て倒す。おおよそ跳満の手だが、嶺上開花(リンシャンカイホウ)が付かなければ安い手とも取れる。しかし、運も実力のうち。さらには赤木ともなれば、嶺上牌を読んでいたとも考えられる。
「俺の勝ち」
「もうアンタと麻雀やらない」
名前は脱力し、卓上の上の煙草を手に取る。しかしその手を赤木が掴んだ。
「その煙草は俺のものだ」
「っ!」
名前は点棒代わりに煙草を賭けていた。無論、その煙草は勝利した赤木のものとなるのだが。
「黙りなさい!未成年!」
そういうと名前は赤木の手を振り払って煙草を手に取り口にした。
「あらら」
それでも赤木は楽しそうに笑っているものだから、名前は大きく息を吸い込んで、フーと赤木の顔に紫煙を吹き付けた。
「バカにするのも大概にしなさいよ」
「勝負に年齢は関係ないだろ」
赤木は残り一本の煙草を手に取り口にする。火は付いてないものの、ライターは既に赤木の手の中だ。
「アンタ、わかってないよ」
「なにがよ」
赤木はライターの火をつけた。
「勝負に年齢は関係ない。俺と名前さんが対等でいられるのは勝負している時だけ」
「だからなによ」
「アンタは仕事もしてて、なんなら俺一人を養うだけの余裕はある。だけど勝負以外の俺は、中学生という檻に縛られたただの子供だ」
遂に赤木は煙草に火をつけた。フゥと支援を吐き出しては眉間にシワが寄る。
「私と対等でいたいってこと?」
「否、できるならアンタを養えるだけの全てが欲しい」
「ふ、欲張りね」
名前は微笑む。9歳も年下の男にそんなことを言われればなおさら。
「この勝負で名前さんは俺のモノだ」
「大人を舐めちゃ困るわね」
「舐めてなんかない、アンタを好きでなにが悪い」
赤木は一口吸っただけの煙草を灰皿に押し付けた。
「この味も分かる程の大人になりたい」
「まだまだ子供ね」
名前も吸い終わった煙草を灰皿に押し付けた。そして立ち上がり、赤木の方へ行きまだ幼い唇に煙草臭い口付け。
「頑張りな」
「嗚呼」
赤木も微笑んで、名前の赤い唇に口付けた。
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