もしも女だったら
美しく伸びる白髪から覗く白い頸。すらりと伸びた指先が掴む牌に、誰もがゴクリと唾を飲む。背が高く、姿勢を正して座る椅子。後ろから見たら傾国の美女を思わせる可憐さ。
しかし美しい女性は残酷にも、切れ長の目をさらに細め倍プッシュと一言。他家は冷や汗をかいた。
「今儲けた1000万に上乗せだ。どちらかが死ぬまで終わらない」
「ヒィ」
短い悲鳴。まるで獲物の魂を食らう悪魔。しかし女の後ろに立つスーツの男が女の肩を掴んだ。
「しげる、今日はそこまでだ。この後浅井組の代打ちの予定が入っている」
「クク、運が良かったなアンタら」
しげると呼ばれた女は静かにその席を立つ。雀卓にあるタバコを胸ポケットにしまい歩き出した。
「今度やるときは腕一本もらってくぜ」
末恐ろしいアマだ、とサシウマしていた男は思った。



屋敷を出るとしげるはタバコに火をつける。男は黙ってそれを見ていた。
「名前、私の顔に何かついてるか?」
ククと笑ってしげるは男を見やる。途端男は赤面して、このピカロめと呟いた。
「アンタも物好きだ。私について来るなんて」
「物好きで悪かったな」
名前としげるは小学校からの付き合いで、なにかと問題ごとに突っ込んでいくしげるを名前は自分がこの少女を守らなきゃ行けないという使命感に駆られていた。それからずっとそばでこの少女を見守ってきて、やがてお互い大人になり、名前は自分がしげるが好きなのだと自覚したのだ。勿論恋愛的な意味で。それからはしげるの秘書的な立ち位置で、彼女の側で長年勤めてはいるが、男よりも男らしい彼女に結局守ってもらっているのが現状である。
「いいや、私はそんな名前が好きだ」
ククとしげるはまた笑うと、持っていたタバコを踏み潰して名前に近づいた。
「昔と全然変わってないな、アンタは」
する、と名前の頬を撫ぜて顔を近づけた。
「お前も、いつも俺より男らしいよ」
近づいてくるしげるに合わせて名前はタバコ臭さが残る唇へと口付けた。
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