ばら色の人生

 「お前、13歳になったら日本の学校へ行け」
 小次郎はいきなりそんなことを言ってきた。学校ってお金ないと行けないししかもジャポンだって!?やったやったと浮かれていると、頭をむんずと掴まれて(小次郎は結構これが得意)「学校に行かせてやる、料理の学校だ。その代わり使えねぇ奴はいらねぇ」とすごい形相で睨みつけてきた。つまるところ、俺の店で働けねぇなら退学(クビ)と言ってるわけだ、やったやった!絶対クビになんてならないもんね。
 「ウィ!」元気よく返事すればホラ仕事しろ、と課題を押しつけられる。「小次郎ありがとう!私ガンバルよ!」出際よく出された課題をこなしているとムスッとした小次郎が「それに追加で日本語の勉強な」と日本語のテキストを何冊も取り出した。「ガ、ガンバリマス」


 「朝は」
 「ボン……おはよう」
 「昼」
 「こ、こんにちは」
 「夜」
 「コンバンハ」
 「なんで最後だけカタコトなんだ」
 「だって日本語ってムズカシイ!」
 「俺みたいに滑らかに喋れるまで学校は行けないな」
 「や、嫌だ!」
 「せいぜい頑張ることだな」
 小次郎は鼻で笑った。本当に日本語って難しい。我がフランスより言葉がたくさんあって、同じ言葉でも使い方とか色々あって、料理より難しいかもしれない。うーん、うーん、と悩んでいると「とりあえず今日はこの一冊終わらせてこい」とテキストを渡された。



 「おばあさん〜、私13歳になったら日本の学校に行くんだ!」
 家に帰るとおばあさんがテレビを見ていて、今日小次郎に言われたことを話すと嬉しそうに微笑んだ。おばあさんは病気がちだったけど小次郎のご飯を食べたら体調が良くなった。やっぱり料理ってすごい。
 「よかったねぇ、でも日本ってあんた喋れるのかい?それに学校って高いんじゃ……」
 「ううん、今日本語の勉強してる!その学校は料理の学校で小次郎の母校なんだって!」そう言ってチラリとテキストを見せる。
 「それとお金は、将来私がSINO'sで働いて返せばいいんだって、奨学金って言ってた」
 「そうかい、そうかい」おばあさんは何度も頷く。
 「あんたはラッキーな子だよ。何か秀でてるものがあるわけじゃない貧乏人に手を差し伸べてくれた四宮さんにちゃあんと恩返しするんだよ」
 「うん」おばあさんは私の頭を何度も撫でる。
 「私じゃあ歳だから何もできやしないからね、名前の人生、今まで苦労してきた分いっぱい薔薇を咲かせておやり」
 「ばら色の人生だ」
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