枯葉

 季節の変わり目。ひゅうひゅうと冷たい風が吹いて、それに合わせて枯葉はからからと音を鳴らす。もうすぐ1年が終わる、そして来年から私は日本だ。
 「中等部3年間はほとんど座学だ、自主的に腕を磨いておけよ」
 「ウィ」
 「向こうに着いたらとりあえず知り合いに頼んどいたからその人の言う通りに行動しろ」
 「ウィ」
 「ちゃんと日本語使えよ」
 「……はい」
 「長期休暇はフランスに帰ってこい、腕試しをする。使えなかったら即退学(クビ)だから覚悟しておくんだな」
 「わかった」
 「あとは……」
 ブツブツと何か言っている。こう見えて四宮小次郎は意外と世話好きだと思う。そうじゃなきゃ私なんかすぐに首切られてたと思う。
 「……そうだな、お前は5年間この俺がみっちり仕込んでやったんだから、『E判定』なんてことにはならねぇ、自信持ってやってこい」そう言うと頭をグシャっと撫でる。雑で痛いけどその節々にはちゃんと優しさを感じられる。やっぱり四宮小次郎はとてもいい人だ。
 「小次郎、私を見つけてくれてありがとう!」
 「……別に、歩いてたらたまたま良い石ころを見つけただけだ」
 「メルシィ」



 そうだ、たまたまいい石を見つけただけなんだ。多分俺が拾わなきゃ他の、それも音楽関連の誰かが拾ってたのかもしれねぇ。俺はそれを無理やりコッチの世界へ引っ張ってきちっただけだ。アコーディオンから流れるシャンソンの陽気さのような、お前の手からどんな料理が生み出されるのか、そんなちょっとの好奇心と貧乏人に対する哀れみでしかねぇ。ただ予想以上にお前は『玉』だった。お前はただ旨いもんが食いたいからと貪欲に料理を極めていくが、たったそれだけでここまで来れる奴は中々いねぇ。……おセンチだが、学生時代の俺にお前を重ねていたのかもしれねぇ。料理が楽しくて仕方なかった、仲間と切磋琢磨する日々を味わって欲しいと少しでも思ってしまった。だからお前の日本行きを決めた。お前は遠月に行かなくても俺の下で十分やっていける。だが若い、その若さを武器に色々なものを世界を、見てくるのも悪くねぇ。
 「取れよ、第一席」
 「ウィ!」
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