レックが帰ってきた。そう聞いてわたしは読みかけの本をボトリ、と落とした。お城に向かおうと思い本能のままに家を飛び出した。本当ならお城に行くのに家着だなんて失礼極まりない。でも、この際格好なんてかまっていられない。というかそんな余裕わたしにはなかった。

「レック!」

「……ミヅキ?!」

彼の口からわたしの名前が出た途端、涙が止まらなかった。誰かが、王子は記憶をなくされたと言っていたから。わたしのことも忘れているんじゃないかって、ちょっと怖かった。でも、わたしレックのこと信じてて本当に良かった。

ふわり、何かに抱きしめられる。それがレックだとわかるのに時間はかからなかった。久しぶりに感じたレックの暖かさとレックの香りに寂しさで埋め尽くされていたわたしの心は満たされていった。

「……ごめんね」

きみを、不安にさせてしまった。震えているレックをわたしはぎゅっと抱きしめた。

「そんなことない、」

こうして生きて帰ってきてくれて、わたしのことも覚えてくれていた。わたしの心はそれだけでいっぱいだよ。

「…もう少しで全て終わるから。それまで待っていてもらえるか?」

「…うん」

行かないでなんて言えない。わたしは泣きそうになるのを抑えて必死に笑顔をつくる。…わたしレックに似合う女の子になっておくからね。可愛いくなれるよう努力するし料理の勉強もする。ダイエットも頑張る。…だからどうか生きて帰ってきてね。

・・・
心臓をふちどる呼吸/title メルヘン

乙女座のユニコーン