「簡単に作れるスイーツレシピ集」を片手にキッチンに立つ。お菓子を食べることが大好きなわたしは作ることももちろん大好きだ。しかし最近はデスタムーア討伐に向けて闘いに明け暮れていたため、とてもとてもお菓子作りどころではなくゆっくり休むことすらできなかった。しかしムーアも倒した今はこうやって普通の生活に戻ることができた。…平和のありがたみを噛み締めながら毎日を過ごしている。

「おじゃまします」

生地を型に流し込んで焼いている途中に突然の訪問者。相手は分かっている。わたしの大好きなあの人。

「あ、レック!どうぞ上がって〜」

ケーキを作っている途中だから部屋でゆっくりしてて、そう促すものの僕も行くと即答された。「ミヅキひとりじゃ寂しいでしょ?」その一言に赤面してしまうわたし。男前すぎる。レックのひとつひとつの気遣いにいつもわたしは嬉しくなる。

「あっ、焼けた!」

焼き終わったことを知らせる音がキッチンに響きわたる。ひとりで待つ一時間はとても長いけどレックと話すとまだ足りないって思っちゃう。話を一時中断し、ワクワクドキドキしながらオーブンをあけると自分で言うのもなんだけどいい感じに焼けたチーズケーキ。失敗してなくて本当に良かった…。

「美味しそうに焼けてるね」

「うんっ、ありがとう。でも失敗してなくて良かった〜」

レックにはやっぱり美味しいものを食べてもらいたいし、下手だって思われるのは絶対に避けたかった。いや、好きなわけであって上手なわけでもないけど。

「あのさいきなり変だしすごくベタなセリフなんだけどさ…聞いてくれる?」

「うん?」

焼けたケーキを取り出しおえ、一息つき、レックの目の前に座る。すると次の瞬間、彼はとんでもないことを口にしたのです。

「君の作ったお菓子を毎日食べたい」

「…ぶっ!!!」

とても歯の浮くようなセリフだ。まさか自分がこんなことを言われる日が来るだなんて思ったこともなかった。おかげでそばにあった紅茶を零してしまうところだった。ていうかこのセリフをレックじゃなくて他の誰かに言われたら完全に鳥肌が立っていると思う。でもわたしの顔は真っ赤すぎて困るくらい熱が集まっている。だってわたしだってレックが好きだから。

「わっ、わたしで良ければいくらでも…!」

「ありがとう」

抱きしめられた瞬間ふわりと甘い香りがした。それはレックの匂いで、お菓子の甘い香りも好きだけどわたしは一番レックの匂いが好きだと思った。わたしは幸せすぎて窒息死してしまうのではないかと思う。

・・・
青の怪獣は砂糖菓子
110502/title メルヘン

乙女座のユニコーン