コウ・ウラキという名前は知っていた。新米パイロットであるにもかかわらずソロモンの悪夢と恐れられたアナベル・ガトーと戦い生きて帰ってきたって。事実、しばらくパイロットたちの間でその話は持ちっきりだった。





「あ〜お腹へったなあ」

「ミヅキっていつもそれ言ってるよね」

「だってわたし常に腹ぺこだもん」

だってあれだけトレーニングして勉強もして、モビルスーツに乗って訓練もして…食べないと持たないもん。まあそりゃわたしはちょっと食べすぎかもしれないけど。


「え〜!こんなににんじんいれるなんて…」

「パイロットなんだからしっかり栄養とらないとダメでしょ」

「に、にんじんだけは食べれないのに…」

なにやら前の方が騒がしい。わたしたちの2〜3人前に並んでいる男の人と食堂のおばちゃんが言い合いをしているみたいだ。にんじんのことで言い争うとか…子供かよ。ぶつぶつ言いながらもお盆を持ち、席に着く男の人を見てそう思った。

「にんじんおいしいのにねー」

「ねー」

わたしも友達もにんじんは大好きなのであった。






「ここ…座ってもいいですか」

「あっ!どうぞ」

席はやっぱり昼時だからということもあって空いてるとこがなかった。その時たまたま1人しかいないテーブルを見つけてダッシュでそこへ向かった。「ミヅキ、こぼれるよ!」「大丈夫大丈夫っ」…じゃなかった。ちょっと水がこぼれた。

「大丈夫か?ちょっと拭くもの借りてくるから待っててよ」

「えっ、」

男の人はわたしたちにそう言うと急いでぞうきんをもらってきて、拭いてくれた。な、なんていい人なんだ!(そして申し訳なさすぎる……)

「あ、ありがとうございます。本当に助かりました」

「かまわないよ。気にしないでくれ」

「本当にすみません。ありがとうございます」

「いいよ全然。それより早く食事しないと休憩時間終わっちゃうよ」

「…あっ、本当だ!」

いけないいけない。すっかり時間のことを忘れていた。まだ時間的に余裕はあるけど食べてすぐ訓練ってのはキツいものがある。

「ところでにんじん食べるか?」

「…はい?」

…ってよく見たらさっきのにんじんいらないって言ってた人じゃーん!気付かなかったよ。

「俺にんじんどうしてもダメでさ。でも残すと怒られるだろ?」

な、お願いだよ。なんだか可哀想に思えてきてついオッケーしてしまった(さっき助けてもらったし)了知すればありがとう!と笑顔で言われた(ちょっとかっこいいかも、なんて)

「俺はコウ・ウラキ。君の名前は?」

「!ミヅキ・サナダです」

「よろしく!」

この人があのコウ・ウラキ…。想像していた人とは全然違って素直で真面目な人なんだなって思った。差し出された手に少し戸惑いながらも手を差し出す。よろしく!その一言がすごく特別な響きでわたしの心に響いた。

・・・
0426 / title:無垢

乙女座のユニコーン