「ミヅキ、帰るか」
「うんっ」
仕事が終わったらこうしてふたりで帰ることが日課になっている。今でこそトロワくんとは仲がいいものの初めは話したことすらあまりなかった。もともと会社の近くで痴漢が現れたというニュースがあり上司に一緒に帰るように命じられたから、というのがふたりで帰りはじめたきっかけであった。
「どうしたんだ、間抜け面をして」
「ま、間抜け面?ひどっ!」
「何か考えごとをしていたのか」
「うん。わたしたちが一緒に帰りはじめたときのこと」
トロワくんと帰れって言われたときはどうしようかと思ったからね。なんていうか…イケメンすぎて恐れ多いって思ったっていうか……。わたしなんぞと一緒でごめんなさい、みたいな。
「あの時はミヅキ、顔を真っ赤にして緊張していたな」
「やっぱり覚えてるんだ…」
「あれは面白かった」
「ああああ!やめてやめてやめて…!」
「大丈夫だ、可愛いかった」
「!!!」
な、何言ってんだこの人は。大丈夫か?そう思ってトロワくんの額に手を当ててみた。…熱くない。
「熱はないね」
「ミヅキ。お前の方が熱があるのではないか」
「な、なんで」
「顔、赤いぞ」
「!」
も、もう…なんなんだこの人。そこは気づかないふりをしてほしかったよ。…でもさ、冗談だとわかってても好きな人に可愛いなんて言われたら嬉しいし…恥ずかしいし…赤くなるなんて当然だよ。
「もう…恥ずかしいからからかわないでよっ」
「……やはりミヅキは可愛いな」
「意味分かんない」
「お前がわからなくても、俺は分かるからいんだ」
な、なんだそれ…。そう思うけどトロワくんがすごく優しい顔でわたしの頭を撫でるものだから何も言わなかった。
その時、手に何かが触れた。
「あ…」
「寒いからな。手を繋ごう」
「……うん」
確かに今日は寒く、今も雪がハラハラと降っている。手を繋ごう、なんてわたしには言えない。恥ずかしいから。それを分かってトロワくんは自分から言ってくれたのかもしれないなって思った。…また顔が熱くなってきた。
「あったかいね」
「ああ」
雪は寒いしあまり好きじゃない。けどこうしてトロワくんと手を繋げたし雪に感謝かな、なんて。ずっと繋いでいたい(トロワくんも同じ気持ちでいてくれたらいいな)
・・・
120217 / title 無垢
乙女座のユニコーン