目の前にいたコウくんがいなくなったと思ったら体に感じる暖かさと圧迫感。目の前にはコウくんの胸板があってわたしは抱きしめられているのだと気づいた。

「コ、コウくん?」

「ごめん……ミヅキ」

わたしはいいんだけれど…いや、まあ恥ずかしいけどコウくんのことを好きな身としては嬉しいし。けど複雑だ。―だってコウくんには…彼女が、ニナさんがいる。



「コウくん…?」

「ごめん。…今だけ…」

「でも…ニナさんは、いいの?」

「………ニナは…信じられない」


驚いた。だってコウくんとニナさんはご飯だっていつも一緒に食べてたしガンダムのことをいつも楽し気に話してて、付き合ってないといってもまるで恋人同士のようだったから。

「でも…ニナさんとすごく仲良かったじゃない?」

「ニナは俺を裏切ったんだ。…ガトーと…」

コウくんの声はどんどん小さくなっていってその続きを聞きとることはできなかった。でも、ガトーという名前が聞こえた。彼のことは知っている。“ソロモンの悪夢”と呼ばれたジオンのエースパイロットだったから。…たぶんその3人の間で何かあったんだろうな。噂によるとコロニー落としの時に同じ場に居合わせたみたいだし。

「…コウくん」

コウくんに何があったか聞くことはできないけどよほど辛いことがあったんだろうなと思った。わたしはかなりコウくんと仲が良いと思うけど、人を信じられないとかマイナスな言葉を使っているコウくんを見たことがないから。

「…ごめん。急に抱きしめたりして。離れるから」

「あっ…」

コウくんが離れていくのを感じて思わず声が出てしまう。
さっきのコウくんの腕の感触とか暖かさがまだ残っていてなんだかすごく切なかった。抱きしめられているのがこんな形でなかったら幸せな余韻に浸れたのに、なんて。

「俺さ…ニナのこと好きだった。けど、もう信じられない」

一体コウくんとニナさんの間に何があったのだろう。知りたいけど聞けない。そんなジレンマを抱えながらも、俯くコウくんを見ていられなくて次はわたしから抱きしめた。…わたしに振り向いてくれればいいのに。そんな願いをほんの少し込めて。

・・・
0701 / title 氷上

乙女座のユニコーン