「高っ…!」
「おや、怖いのですか」
わたしを抱きかかえながら夜の町を見下ろしハングライダーで空をとぶキッド。二人分の体重をハングライダーで支えきれるのかなんて野暮なことは聞いてはいけない。
「だ、だって空飛んでるんだよ?!」
そう言うとクツクツと笑うキッド。わたしはとてもじゃないが笑えない。ていうかハングライダーで空を飛ぶことに恐怖を覚えるのはわたしだけじゃなくて世の大半のひとだと思う。
「ではわたしがあなたにその楽しさを教えてあげましょう」
にこり、と笑うキッドの笑顔は格好良くて思わずドキリとした。
それに今さら気づいたけどわたしは彼に抱きしめられてたということもあって、かなり距離が近かった。それを自覚した途端キッドに触れられている部分、わたしの顔がどんどん熱を帯びていくのが分かる。
「ほら、見てください
星が綺麗ですよ」
キッドの声にはっ、とし頭上を見るとそこには数えきれないほどのたくさんの星があった。やっぱり空から近いというだけあっていつも家から眺めるより断然きれいでついうっとりと魅入ってしまう。
「きれい……」
「ずっとあなたと見たいと思っていたんですよ」
その彼の言葉にさらに顔が赤くなる。そんな言葉をこんな視近距離で、しかも抱きしめられて、耳元で言うだなんて反則だ。
それからわたし達は他愛もない会話をした。学校のこと友達のこと家族のこと好きなひとのこと…。
初めはキッドなんて胡散臭くて信用できないと思っていた。でも実際はその逆でとても話しやすくていくら話しても話し足りないくらいだった。この時間が永遠に続いてほしいだなんて願ってしまう。
…例えそれが無理な話だとしても。わたしはキッドのことがいつのまにか好きになりはじめていたのかもしれない。
「…では体も冷えますし、そろそろ戻りましょうか」
「…いや」
そう言いキッドの首にぎゅっ、と抱きつく。キッドがわたしのことを心配してくれているということは分かっている。でもこの一時を終わらせたくなんてなかった。キッドは困りましたね、と少し困ったように笑った。わたしはそんな顔が見たくなくて彼の胸にぎゅっ、と顔をうずめた。
気がつけば朝になっていた。わたしはぐっすりと眠っていたみたいだった。もちろん場所はわたしの家の、自分のベッド。
キッドに帰ろうと言われて拒んで…そのあとのことはもう覚えてない。もしかして夢だったのかな?。リアルな夢だったけど、夢だったら悲しい。気がつけばわたしの瞳からは涙が溢れていた。
夜泳できるならあの時、彼とともに夜に溶けてしまいたかった
わたしは今夜も彼を思う
彼が迎えにきてくれると信じて
・・・
101013
thx 氷上
乙女座のユニコーン