「やっと、勝てた…」
今までどうあがいても先輩にシュートを決めることが出来なかった。先輩は女の人で、現在はサッカーをやっていないにも関わらず俺たちよりも上手い。俺や一馬、結人が何度も先輩に勝負を挑んだが一度も勝てたことはなかった。
「あ゛ぁー、やられたー!!」
先輩は悔しそうにその場に崩れ落ちた。勝てたことによる震えを抑えて先輩の元へ駆け寄る。
「、先輩」
遠慮がちに呼びかけるものの先輩は一向に反応する気配がない。先輩は勝ち気な人だ。負けたことが悔しくて落ちこんでいるのかもしれない。少しでも自分の勝ちに興奮して舞い上がった自分を情けなく思った。
「…あの、先輩」
「英士くん!!名ゴールキーパーであるわたしにシュートを決めるなんて相当練習したでしょ!」
…驚いた。先輩は落ちこんでいるどころか笑っていた。…そうだ、先輩はこういう人だった。昔から超ポジティブで、負けてもそれを受けとめ、次に繋がるよう努力できる人だ。
「…まあ俺も一応、東京選抜のメンバーですし先輩に負け続けるのは悔しかったですし」
「……なんだか悔しいはずなのに嬉しいのはなぜだろう」
「…先輩ってMですよね」
そうからかえばMじゃない、Sなの!という先輩。俺はどう考えても先輩はMだと思う。ちなみに俺はSだけどね。
「SとかMの問題じゃなくて…なんか英士くんが強くなってるのが嬉しくて」
先輩はそう言い嬉しそうに笑った。現在サッカーをやっていない、それも女の人にそう言われるのも複雑で色々思うことはあるけど先輩が本当に嬉しそうに笑うものだからそんな気持ちは吹き飛び俺も自然と笑顔になる。
「そう言えば…先輩はあの約束覚えてますか?」
「約束??」
目をきょどきょどさせ必死に思い出そうとする先輩に思わずため息が出る。…俺はずっと覚えてたのにね。
「一馬と結人と俺の中で勝った人が先輩に言うことを聞いてもらうって約束です」
「…あ〜、そんな約束もしたなあ」
「思い出したところで、早速いしてもいいですか」
「うん、いいよ」
…俺がお願いすることは、昔から決まっている。
「俺と付き合ってください」
「…えええ!!!いいいいきなりどどどうしたの??」
「(どもりすぎ)
いきなりじゃあありません
昔からそう言おうって決めてました」
突然の俺の告白に顔を真っ赤にしている先輩をとても愛おしく思った。いつもは強い先輩がこの時ばかりは別人の女の子に見えた。
「先輩も俺のこと好きだから大丈夫ですよね」
「え、は?」
なんでバレてるの、という顔をして俺を見る先輩は間抜けで可愛いく、俺の心臓をときめかせる。
「なんで知ってるかは…秘密ですけど」
先輩と仲のいい女の人から聞き出しただなんて絶対に言えない。
「…わ、わたしも好き、英士くんのこと」
挙動不審に陥っていた先輩が口を開く。そう聞くや否や先輩を強く抱きしめていた。先輩が俺を好きだという事実を知った上でも、本人から聞く好きは想像以上の破壊力を持っていた。
「付き合ってください」
「…よよよ、よろしく」
最後までどもりっぱなしの先輩は可愛いくてたまらなかった。
乙女座のユニコーン