「あ、あの…今日は一緒に寝てほしいんだけど…」

どきり、と心臓が鳴る。
目の前のマスターは頬を赤く染めぎゅっと私の服を掴んでいる。
濡れた瞳で見つめられ、熱が顔に集まる。
今すぐにでもその手を取り、ベッドに倒れこみ、思い切り抱きしめたい。キスをしたい。そんな欲求が渦巻きはじめる。
…だが私は彼女の下部。そんな感情を持つことは許されることではない。
それに一緒のベッドに入って自分を押さえられる自信がない。

「…マスター、お言葉ですが」

なんとか声を振り絞り、マスターの小さな手をそっと離す。

「わたしはあなたの下部。そのようなことはできかねます」

「…ブラマジはわたしのこと嫌いなの?」

「そ、そのようなことは決してありません!」

それは絶対にありえないことだ。嫌いであるならばこのような葛藤などするはずもない。…お慕いしているからこそ葛藤しているのだ。

「じゃあお願い、一緒に寝てほしい」

再びマスターが私の服をぎゅっと掴む。

「…マスター」

「…嫌いじゃないんだよね?」

「…」

「お願い、今日だけだから」

なんとか断ろうと思っていたが、あの愛らしいお顔で寂しそうに見つめてこられるものだからどうしても断ることができなかった。(逆に断れる男がいるのだろうか)一瞬迷ったが私はため息を一つ吐き、頷いた。

「…分かりました」

明かりを消し、マスターがベッドに入った後恐る恐る私も入った。




ぎゅうっ

「マ、マスター!」

ベッドに入るや否やマスターに抱きつかれた。
こ、ここれは一体どういうことなんだ…!というかこういった時はどうしたらいいのだろうか。わたしの胸に顔を埋めるマスターからほんのり石鹸の香りが漂ってきて堪らない気分になる。
顔に熱が集まる。熱くて熱くて堪らない。抱きしめ返すべきなのだろうか、いやそんなことを私がしてもよいのだろうか。
悶々とする私にマスターは更なる爆弾を投下してきた。

「安心する…。ブラマジもぎゅっとして…」

そう言いながら頭をぐりぐりと胸に押し付けてくるマスター。私ともあろうものが、本当に一瞬だけ理性を奪われそうになった。しかし私はあくまで下部。…あくまで下部なのだ。

「…承知しました」

遠慮がちにマスターの背中に手を回す。先程よりもマスターのぬくもりを近くに感じ、たまらない気持ちになる。

「あったかい。今日はずっとこうしててね」

そう言いマスターは次第にすやすやと寝息をたて始めたが、私はそうはいかない。こんな状況で寝れるはずなどない。…お慕いしている女性とこんなにくっついた状態で…理性を保つことで精一杯だ。
そもそも自分は男として見られていないのだろうか?信頼してくれているということは分かるが少し複雑な気分だ。
すっかり寝入ったマスターを起こさないよう本日二度目のため息をついた。

・・・☆
0125/title:魔女

乙女座のユニコーン