その日、わたしとレッドさんは一緒にサファリゾーンに来ていた。わたしがレッドさんにミニリュウが欲しいと言ったのがきっかけだ。本当はフスベシティの方がいいかもしれないけど、ドラゴンポケモンがたくさん生息する竜の穴は入るための手続きや何やらがめちゃめちゃ面倒くさい、ということで辞めた。


「レッドさん…釣れないですね」

「辛抱が大切」


ミニリュウゲットに取り組み始めて三十分。ミニリュウどころかコイキングすら釣れる気配はせず萎え気味なわたし。だんだんと飽きてきてレッドさんの反応を伺うもののレッドさんは全然くたびれている様子は微塵もない。


「あ〜、眠…」

大きなあくびが出る。どうしよう、やばいすごく眠い。昨日のシロガネ山でのレッドさんとそのポケモンによるドS攻撃、いや愛のポケモンバトルの疲労からなのかもしれない。瞼は自然と落ちていき、体の力も抜けていく。わたしの体は睡眠モードに突入しようとしていた。両手に釣り竿を持ったまま。


「…ミヅキ!」

眠りにつこうとしていた体はレッドさんの叫びにより一瞬で覚醒する。その瞬間、持っていた釣り竿がとても強い力で引っ張っられるのを感じた。竿を握りしめ、力の限りその場に踏ん張る。でもその力は想像以上に強く、わたしの体はどんどん水面へと引き寄せられていく。


「うわっ、落ちる落ちる!」

「ミヅキ、大丈夫だから落ち着いて」


湖に落ちる覚悟をした矢先、レッドさんの手がわたしの竿を掴む。後ろから抱き込む形になり、レッドさんの胸の位置にわたしの頭が押し付けられる形になる。レッドさんのたくましい筋肉と温かさ、鼓動が伝わってきて何をしているか分からないくらい、ドキドキして変な気分になった(決してエロスな意味ではないからね)


「ミヅキ、しっかり踏ん張ってて」


そう言ったレッドさんは見事ポケモンを釣り上げた。レッドさんが釣り上げたポケモンは、なんとわたしの欲しいと願ってやまなかったミニリュウだった。


「わあ!ミニリュウだ!」


身近で見るミニリュウはとても可愛かった。わたし一人で捕まえることなんて、絶対に出来なかった。バトルも強くて、ポケモンゲットも上手なレッドさんはやっぱりすごいとしか言いようがない。レッドさんありがとう、そう言いながらレッドさんの方を向いた。

後ろを向いた時、わたしはとてもビックリした。そこには顔を真っ赤にしたレッドさんがいたからだ。わたしは今までこんなレッドさんの顔を見たことがなかった。そしてハッ、とする。わたしたち竿まだ持ったままだった。つまりわたしは未だレッドさんに後ろから抱きしめられるに近い形をとられている。
ミニリュウを釣り上げた興奮により抱きしめらる体制、この事実を忘れてしまっていた。さっきはあんなにドキドキしていたのに一瞬でも忘れるとかまじどんだけ!と自分を攻める。頭にくっつけられたレッドさんの胸からは早い心臓の音がした。レッドさんをじっと見つめていたらなぜか殴られた。

「いてっ」

「…竿持ってるからミニリュウをボールに」

「あ、はい!」

ハッ、としモンスターボールをリュックから取り出す。投げたボールにミニリュウは収まり無事にゲットすることが出来た。レッドさんにお礼を言う。消えないドキドキを抑えながら。


「あの…手伝ってくださり本当にありがとうございました」

「…また欲しいポケモンとかいたら手伝うから」

「っありがとうございます!」


今回のミニリュウゲットで散々手間をかけたにも関わらず、怒るどころかまた手伝ってくれるというレッドさんは本当に優しい。わたしもいつかレッドさんみたいなトレーナーになりたいと再び強く思った。


「ポケモンゲットする時は絶対に僕に言って」

「はいっ」

「…僕以外の人とは行ったらダメ
特に釣りは」


そう言ってレッドさんは帽子を深くかぶり直した。表情は見えないけどさっきあんなことがあったばかりだからやっぱり意識しちゃう。それとレッドさん、わたしそんなこと言われたら勘違いしちゃいます。


「(ミヅキと他の男があんな視近距離になるとかありえない)」

くっつかれて、あんな目で見つめられて落ちない男はいないから。他の男と出かけたりなんてしたら絶対に、ダメだ。

・・・
101116 / title氷上
水歩ちゃんへ
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乙女座のユニコーン