現在誠二くんの家にお邪魔している。休暇に入る前に過ごさないかと誘われたからだ。わたしは誠二くんのことが好きだからドキドキしながらも二つ返事で承諾した。…でも誘ってもらえた時は本当に驚いた。確かにわたしと誠二くんの仲はいい。けどそれは友人としての範囲だと思っていたから。誠二くんはプロのサッカー選手だから忙しくて、会うのもたまに誠二くんが地元に帰ってくる時くらいだったし、その時は家で会ったわけでなく外で食事をした程度だった。だからどういうつもりなのだろうかと悶々としているのだ。そんな気持ちを知るはずもない誠二くんはいつものような人懐っこい笑顔で格ゲーしよう、なんて言ってきて。正直得意ではないけれど気分が紛れそうだと感じ了承したのだ。…けれど誠二くんに勝てるはずもなく。
「うわーまた負けた!」
「いやでもだいぶミヅキは筋いいよ。すぐに上手くなりそうだし」
「えっ、そうかな…?ありがと」
「それにしても…こうしてミヅキと俺の家で過ごせるなんて思ってもなかったなー」
コントローラーを置いてこちらを見つめニッと笑う誠二くん。爽やかな笑顔で、何てことのないように、さらりとそんなこと言っちゃうんだから全く叶わない。
「うん、わたしも…。誘ってくれてありがとうね」
いつもはちゃんと目を見て話せるのに照れくさくてどうしても視線が泳いでしまう。…誠二くんは今どんな顔をしているんだろう。わたしはきっと情けない顔をしているだろう。俯いてひざに置いた手でぎゅっと服をつかんだ。
「ミヅキ、こっち向いて」
「いや…無理」
「なんで?」
「なんか恥ずかしいから」
「ダメ。向いてもらうからな」
そう言ってあろうことか誠二くんはなんとわたしの頬に両手を沿えて自分の方向に向かせたのだ。な、何をしているんだこの人は…!そして1番驚いたのは誠二くんとの顔の近さだった。少し動けばキスできそうな距離に誠二くんの顔があった。もはや声すら出ない。そして次の瞬間
ちゅ
「〜〜!」
「はは、ミヅキ顔真っ赤!可愛いなぁ〜」
「ちょ、何言ってるの!もう…何なのー!!」
バシッ
「いてっ!叩くことないだろー。おでこじゃん!口にしたわけじゃないのに…」
「そういう問題じゃないよ!もう…びっくりした」
何なんだ…!いきなりキ、キスされるなんて…不意打ちにもほどがあるんですけど!
好きな人だから嬉しい…のだろうけど。ちら、と誠二くんを見ると誠二くんも顔を真っ赤にしていた。
「あれ…?誠二くんも顔真っ赤」
「ばっ!こっち見るなよ!!」
右手で口許を隠し、目を反らす誠二くん。誠二くんのこんなところ初めて見た。いつもわたしばっかりドキドキしていて、それを見て誠二くんは可愛い、なんて言って何でもなさそうにニコニコ笑っていたから。心臓がぎゅ、と掴まれたように痛い。
「…ミヅキがどう思ってるか分かんないけど俺だって余裕ないんだからな」
いつになく真剣な誠二くんの顔。私は照れから顔を上げることなんてできなくて、ぎゅっと拳を握りしめた。
そんな顔されたら私と一緒の気持ちなんじゃないかって期待しちゃうよ。
「俺さ、何とも思ってもない子を家に上げたりなんかしないから。この意味分かる?」
分かる、分かるけど…。それを口に出すことができない。えっと、とかあの、なんて情けない声しか出ない。
「…私、期待していいの?」
「期待してくれなきゃ、困る」
顔を赤くしながらも真っ直ぐに私を見つめる誠二くん。
普段は無邪気なのに少し強引で、こんな顔するなんて反則だ。
恥ずかしいはずなのに、私は目を反らすことができなかった。
・・・
180211
乙女座のユニコーン