それは、在りし記憶の欠片
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    廃病棟

    薄明かりに照らされた病棟入り口は不思議な雰囲気に包まれている。更に足を踏み入れてみれば手入れがされているのか外観の割に内装は綺麗だった。

    しかし、受付には誰も居ない。

    誰も居ない静寂の待合い受付を横切り進んで行くと、途端に病棟らしい穏やかな空間が広がった。

    消毒液の匂いが漂い、入り口付近よりも明るく暖かな空気が流れている。診察室、ナースステーション、手術室と各部屋が立ち並んだ風景はまさに病院。

    ガチャリと扉が開く音がするとそこに一人フラフラと部屋から歩いて出てくる人物に目が留まる。

    それは、引きずりそうな長い三つ編みの色素の薄い髪に白い肌をしていて、赤い染みが付いた白衣を羽織っている青年だった。

    『…あ』

    こちらに気付くと青年は穏やかに微笑んだ。

    『私の病棟にいらしゃいませ』


    此処は時折人が迷い込む、穏やかで優しい狂気を持つ闇専門医が運営する病棟。

    人を止めた際はどうぞ御贔屓に。

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