そうして、秀徳との戦いが始まる。
入場後、兄さんが火神君に声をかけた。


「火神君…」
「あ?」
「さっき入場の時、緑間君の顔見ましたか?」
「…ああ」


私も見た。緑間君の顔を。
今まで無敗だった故に、どこかスマートさが残っていたキセキの世代。
だけど負けたことにより、敗北の恐怖を彼は知った。
そういう人間は、勝利に飢える。


「はっ、飢えてるだあ?」
「こっぴどく負けたことがあるのは、向こうだけじゃねーだろ」
「ああ、そうだな」


皆が並んだ。
緑間君を、見据えて。


「負けるのなんざ、一度でたくさんだ。ハラペコなのは」
「こっちも一緒です」










火神君と緑間君が向き合う。
熱い視線が飛び合った。
高尾君が、兄さんに声をかける。


「悪ーけど、今回はあいつたぶん…お前にかまうゆとりはないぜ。前回と違って今回アイツは、火神のことを完全にライバルとして認めてる。そんでそれは、オレも、先輩達も一緒だ」
「…嬉しいです。…けど、だったらなおさら、負けません…!」


兄さんも燃えている。というか、ここに居る人で燃えていない人なんて居ないようだ。


「思った通り、油断なんて微塵もないわね。仮に秀徳の戦型が前回と同じなら、勝つための必須条件はやはり緑間君の攻略よ」
「……ですが監督、緑間君の超長距離3Pは、多分……」
「そうね、十中八九弾数に限界があるわ」
「え?」


緑間君の3Pは、本当に長い距離を飛ぶから、ゴールに届かせるだけでも全身の力をボールに乗せる必要がある。
それに前の試合、シュートを撃つたびに、少しずつタメが長くなっていた。


「全てじゃなくてもそこまで抑えることができれば、成功率は一気に落ちるはずよ…!!」
「それなら…いるじゃんか、緑間を苦しめた奴が…! しかも今回は体力満タンで!!」


そして、試合が始まる。


「火神君、どうやら緑間君は君と一騎打ちを望んでいます。そもそも相手をできるのは火神君しかいません。なのですいません、緑間君は全面的におまかせしてもいいですか?」
「ハッ、ったりめーだ!! 言われなくてもそのつもりだよ」
「…火神!!」

予想通り、緑間君と火神君は一騎打ち。
ボールは誠凛ボールから。伊月先輩にボールが渡り、かと思った隙に高尾君が持っていく。


「なっ!?」
「よぉしナイス高尾」
「げっ!?」


高尾君がパスを出す。ゴールの前はがら空きだ。


「まずは先取点、いただきだ!!」


と、そのとき兄さんがボールをはじいた。


「何っ!?」
「よっしゃでかしたぁ!!」


流石兄さんだ。一瞬の隙も見逃さない。


「いや、だがボールを拾ったのは…」
「うわぁあ緑間!!」


緑間君がシュートを投げる。が、そこで火神君がボールをたたき落とした。


「火神!!」
「っだと!?」
「おっしゃあナイスブロック!!」


ボールがコートの外へ。秀徳ボールだ。


「うおおぉすげぇえ!! いきなり火花散りまくりだ!」
「息するの忘れちゃったよ!!」


今の、火神君のジャンプ。
前より確かに高くなっている。


「んなタメの長いシュート、オレがいる限りそうそう撃てると思うなよ!!」
「……」


緑間君は火神君に何も言うことなく、視線をそらした。
けれどあの緑間君だ、何も感じていないわけではないだろう。

再び緑間君の3P。けれどまた火神君が飛んで止める。


「うおおマジかよ、あの緑間を…」
「連続ブロック!!」


緑間君のジャンプには、変化がない。
新技もない。高さも同じ。タメも同じ。


「言っておくが、新技などないのだよ。オレが今日までやってきたのは、ひたすら体力アップの基礎トレーニングだ。確かにオレとお前は相性が悪いかもしれん。だがなめるなよ」


緑間君が、火神君に向き直った。


「その程度で付け焼き刃の武器を身につけるほど…オレのシュートは安くない…!!」


ああ、そうだった。緑間君は、そういう人だ。


「気づいてるだろうが、オレのシュートは無限に撃ち続けられるわけではない。だがそれは、お前のジャンプも同じことだ。だったらやることは一つなのだよ」


ただひたすらに、実直に。
努力を一つ一つ、確実に積み重ねていく。


「オマエが飛べなくなるまで撃てばいいだけの話だ。たとえそれが、万でも億でもな…!!」
「…おもしれー!!」


つまり、緑間君は根比べをしようとしているのか。
でも。


「…妙です」
「どうした黒子?」
「上手く言えませんが…緑間君らしくないです」


らしくない。そう言われれば、そうかもしれない。
緑間君は決まらないシュートは撃たない、はずなのに。








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