「けど、どうする?」
「今の秀徳止めるとか、ちょっと思いつかないぞ…」
「それを今からみんなで考えるんだろ?」
「ねーのかよ! なんも!」
「そーだなー…とりあえず黒子はひっこめるか!」
「え」
「え」


思わず、兄さんと同じタイミングで声が出た。それほど木吉先輩はいい笑顔だった。


「ミスディレクションがほとんど切れてるんじゃ出てても足手まといだしな。ちょいちょいがんばってるけどプラマイで言えばマイナスだ。とりあえず今のところいるイミはあんまない!」


ず、ズタズタに言ってくるなこの人。
兄さんが放心している。精神状態が限りなく心配だ。
だけどそれは監督も同じ考えだったようで、兄さんの代わりに水戸部先輩が出てきた。


「に、兄さん……」
「大丈夫です、千瀬」
「まだ出番あるぞ、集中力切らすなよ」
「心配しねーでひとまずみんなに任せろ!」
「本当に大丈夫なんです。むしろ新しいドライブを使うためにはこっちの方が助かります。それに…心配はしてません、信じてますから」


そう言った兄さんは、まっすぐな目をしていた。
この様子なら、本当に大丈夫そうだ。兄さんはわかりやすい人だから。


「とりあえず、緑間封じは必須だ。このままオレと火神でダブルチームをかける」
「そんな…オレ一人でもいけるぜ! ですよ!」
「意気込みは買うが、フェイクとパスを織り交ぜられたらどうしようもない。お前が飛べなくなったらそれこそアウトだ」
「けどそうすると、苦しいのはコッチだ。いくらなんでも水戸部だけじゃ、インサイドは手も足も出ないぞ」
「ならもう…そーゆうことだろ」


日向先輩がため息をつく。

そして再開した試合。緑間君にダブルチームは続行で、けれどインサイドが弱く、シュートを決められる。


「止められないなら、それより取るしかないだろ。走るぞ!!」


伊月先輩のパス、日向先輩のパス。とにかくパス回しが早く、アップテンポな攻撃だ。
あっという間に攻め込んで、木吉先輩にボールが渡る。


「させっかぁ、殺すぞ!!」


木吉先輩がボールを投げる。……ふりをして、水戸部先輩にボールが渡った。


「な!?」
「おおお決まったー!!」


この状態は、まるで桐皇のようだ。
パスを重ね、とにかく攻撃に移る。


「おおお、誠凛の攻撃激しい!!」
「秀徳を止められないが、すぐに取り返すぞォ」


これはおそらく、昔の誠凛の攻撃パターンだ。
今の誠凛は攻撃型チームバスケット。だけど木吉先輩が居た頃は、少し違ったはずだ。
木吉先輩と日向先輩の中外二枚看板、五人の総力とパスワークで点を取り合う。
ラン&ガンのスピードバスケット。それが誠凛の本来の姿だ。


「鉄平が入って変わることは二つあるわ。一つはインサイドの強化、そしてもう一つはPG伊月君と一緒にボールを回すことによるパスの高速化。ハイペースの点取り合戦が、誠凛の真骨頂なのよ!」


下手に守りに入るよりはよほど賢明な判断だ。けれど。

ボールがゴールリングに当たる。そこを秀徳のキャプテンが取った。
緑間君にボールが渡り、3P。それは見事に決まる。


「何をボーッとしているのだよ。一瞬たりとも気を抜くな、オレを止めたければな…!!」
「きたぁー!! 緑間超長距離スリー!!」
「すげぇ…何アレ!?」
「なんで入るんだ、人間技じゃねぇー!!」
「よーしゃあナイシュ緑間ァ!!」
「気にするな火神!! 取り返すぞ!!」
「行くぞォ!!」


と、そのとき。第2Q終了の合図が鳴る。
恐らく後半は点取り合戦だけど、有利なのは秀徳だ。
……ただ、うちには兄さんが居る。
兄さんはキセキの世代、幻の6人目。その呼び名は伊達じゃない。






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