主に半兵衛受けのお話が多いです。
その時を共に
慶半、純愛、初夜
(時間がない)
そう思いながら半兵衛は今日も急ぎ足で自室へと向かっていた。明日の軍議に使う資料を用意したり、思い付いた策や新しい陣形をまとめたり、次は何処の領土を奪うか…やること考えることは沢山ありすぎて寝ている時間すら惜しい。
(本当に…時間がない)
そして、身体を蝕む病魔のせいもあって彼は人より「時間がない」のだ。戦の時以外は仮面を外して過ごしているが、それでも紫の瞳は穏やかではない。ふと、自室の目の前で足が止まる。今日は特に誰かを招いた覚えも無いが確かに中から人の気配がする。小さく溜息をつきながら襖へ手をかけた。中に誰がいるかなんかとっくに分かっていた。
「…不法侵入」
苛立ちを込めて言った言葉を気にもとめずその人物はまるで自分の家のように横たわり寛ぎながら振り返る。
「よぉ半兵衛、お邪魔してまーす」
待ってましたと言わんばかりに嬉しそうな笑顔を浮かべて胡座をかいたのは「前田の風来坊」と有名な前田慶次であった。
「邪魔するつもりなら帰ってくれといつも言っているだろ」
「とか言いつついつも追い出さないくせに。ほらほら飲もうぜ」
要らない、ときっぱり断ると半兵衛は机に向かい紙を広げ、黙々と筆を動かし始めた。お猪口に注がれた酒をぐびっと飲み干すと振り向く気配もない銀髪に語りかける。
「なぁ、半兵衛」
「…」
「半兵衛ー?」
「…」
「ってかお前さ、ちゃんと休んでる?」
はぁ、と大きめの溜息と共にぱた、と筆を置く音が鳴る。
「だったら何だというんだ」
至極面倒くさそうに言い放って振り向いた紫の瞳は厳しく慶次を睨みつける。こんなやりとりすら時間の無駄だと半兵衛に苛立ちが募る。
「生き急いでんのか死に急いでんのか分からねぇやつだな」
「…」
「いいなぁ秀吉は。半兵衛にこーんなに大事に大事に思われて」
「君…いい加減っ」
よく喋る煩い口を制してやろうと思った途端腕を引かれて半兵衛は体勢を崩した。畳へ倒れ込んだと思ったが意外にも痛みはなく慶次が引いた手とは逆の手で受け止めてくれたのだと気付いた。文句を言おうと振り返れば両手を畳に押さえ付けられ、下半身は自分より遥かに逞しい肉体で組み敷かれ自由がきかない。唯一自由な目できっと睨むが目の前の男は無邪気に笑っていた。
「でも俺なら、こんなに無理させたりはしないけどね」
帯を解いてはだけさせた着物の間から見える肌は透き通るように白い。男にしては痩せ過ぎな体は少し骨が浮かび上がっていてより儚さが増して見える。力を加えれば折れそうな鎖骨に指を這わせると細い体が微かに震えた。
「慶次君、君飲み過ぎだよ」
「だったら何だっていうんだ」
先程の仕返しのつもりなのか半兵衛の言葉を突っぱねる。白い首筋に唇を落とし胸元まで舌を這わせると薄い唇から声が漏れる。
「っ…」
くすり、と胸元から笑い声が聞こえて顔を顰める。まるで女人のようだとでも思われただろうか、男のくせにと馬鹿にされただろうか、昔から散々言われてきたことだがやはり悔しいものは悔しい。
「半兵衛気持ち良い?」
「…くすぐったいだけだよ」
強がりだと思われたかもしれないが、確かにくすぐったかった。胸の突起を舐められても指先で転がされてもまだ半兵衛には女人のようにそこで快感を覚えることはなかった。それでもその行為自体に興奮を覚えないかというとそうでもない。
「ふっ…う…」
いつもより少し紅潮した慶次の顔がやたら男に見える。体をなぞる手の平も首や胸元を這う唇も熱い。熱い筈なのに触られたところからぞくっと鳥肌が立つ。
「あれ、寒い?」
「…別にっ」
肌を触られることが気持ち良いだなんで死んでも言うもんかと半兵衛は思った。だが言わずとも自分の欲望は正直で既に魔羅は硬さを増して立ち上がりつつあった。
「そうか、ならよかった」
ふわり、と笑って不意に大きな手の平は存在を主張しつつある半兵衛の中心を包み込んだ。ばれている、そう思った瞬間緩やかに甘い刺激が下半身に走る。
「うぁ…はっ…」
「ほんとに、よかった。半兵衛に気持ち良くなってもらえて」
布越しで軽く撫でた後、着物の間を割って直接触れる。既に先走りでぬるぬるになっているそれをゆっくり上下に擦りあげれば動きに合わせて艶のある声が聞こえた。
「あっ……う…んぁ…っ」
「…」
「けい…じっ…くん…なんでこんな…」
必死に快感を堪えようと口元に手の甲を当てて半兵衛は問う。酔っているとはいえ慶次が男色だと聞いたことはない。やれ恋だ、やれ好きな人だと普段から煩い彼が興味本位で男を抱くとも思えない。
「だって半兵衛、ほっとくとずーっと休まないで秀吉秀吉って働くだろ」
「ふっ…っぅぅ…」
「だから、たまには仕事から離れてゆっくり休んでもらおうって思ってな」
「いっ…言ってることと…やってることとが…滅茶苦茶だと思わないのか…いっ…」
ちょっと運動した方が良く寝れるらしいよ、とどこから聞きかじったのか分からない知恵を得意気に披露する。呆れてものも言えないと半兵衛はまた溜息をつくが突如尻に違和感を覚えひっ、と息を飲んだ。
「なにを…っ」
先程から弄っていた魔羅の先走りでぬるぬるになった指で慶次は半兵衛の蕾をなぞっていた。
「半兵衛、ここまできてなにをするとか本当に分からない?お前頭良いのにさ」
ニヤニヤとこれまた楽しそうに笑う慶次を睨みつける。なにをするかなんてとっくに半兵衛は分かっていた、問題は何故自分にそうするのかだ。仲良しこよしならいざ知らず、誰が見ても仲が悪くましてや男同士。女に困ってないであろう慶次が自分を相手に選んだ理由が見当たらない。
「あっ…!」
他所ごとを考えられていたことが気に食わなかったのか予告もなく中指を蕾の中へと突っ込んだ。初めてそこに物を受け入れたのであろう半兵衛は困惑の色を顔に浮かべて硬直した。
「あ、もしかして初めて?」
「だ…だったら」
「なんでもないよ」
「ぁっ…動かさっ…ないで…はぁっ」
何故か嬉しそうに笑った慶次は中を探るように指を動かし始めた。ぐちゃぐちゃをいやらしく音を立てながらそこに入れる指を増やしていく。それに伴って半兵衛も体を震わせ声を漏らす。
「そんなに騒いで大丈夫?あの心配性な坊やがすっ飛んでくるんじゃないの」
(三成君…っ!)
自分と秀吉を心底敬愛してくれている信頼の厚い部下にこんな痴態を晒すわけにはいかない。
「…っ……っっ」
両手で自らの口を塞ぎ声を漏らすまいと必死に耐える半兵衛を見てますます慶次は上機嫌になっていった。
「もー、半兵衛って本当可愛いなぁ」
半兵衛は「可愛い」という言葉が昔から大嫌いだった。だが、何故か今は全く嫌悪感を抱かなかった。
いつの間にか蕾を拡げる指は三本にまで増えそろそろ、と呟いた慶次はごそごそと帯を外し始めた。もはや羽織るだけになっていた半兵衛の着物と自分の着物を重ねて畳へ敷き、そこへ改めて半兵衛を寝かせる。彼なりの気遣いであろう、と思うがそれならそもそもこんな行為をしなくても、と同時に思った。
白くしなやかな足を片方肩にかけると苦しそうに立ち上がった魔羅を半兵衛の蕾に押し当てた。指に比べて随分と図太いそれが自分の中に入るなんて、恐怖と戸惑いに半兵衛は身を固くして珍しく怯えていた。
「半兵衛…」
慶次はそれに気付いて、震える瞼に唇を落とした。
「大丈夫、大丈夫だから」
大きな手の平で頬を撫でる。温かくて優しいそれは落ち着きを取り戻すのに十分ですぐに体から力が抜けていった。
それを見計らって慶次はゆっくりゆっくり、決して無理はせず自身を半兵衛の中へと進めていった。
「…うっ…んぅっ」
「はっ…すご、きっついなぁ…」
今までに体験したことのない圧迫感が半兵衛を襲う。一体これはどこまで入ってくるのか、恐怖はもう消えたが困惑は残ったままであった。根元まで受け入れた時には呼吸は浅くなり少し苦しいくらいだったが、半兵衛の魔羅は萎えることなく立ち上がったままだった。
「はぁ…半兵衛、苦しい?」
「っ…はっ……はっ…」
「半兵衛」
口を塞いでいた両手はとにかく何かを掴みたくて慶次の両肩へ置かれていた。返事はできずとも頷く半兵衛に安心して、熱くなった体を抱き締めた。
ーー細い、簡単に折れてしまいそうだ。
「半兵衛、聞いてくれないか」
刑事がそのまま耳元で呟く。
「俺さ、半兵衛が秀吉のこと大切に思ってるの知ってるよ。でも秀吉のために頑張って頑張って、そんで体を壊していく半兵衛を見てるのは辛いんだ。俺にとって半兵衛はすごく大切な人なんだ」
「…慶次…君」
「好きだよ半兵衛」
そう言い終わると慶次は半兵衛に口付ける。固く閉じられていると思った唇は意外にもすぐ開き、中へと受け入れてくれた。もう疲れて抵抗しなくなっただけなのかもしれない、それでも慶次には嬉しかった。舌を絡め、音を鳴らして唇を話すと銀色の糸が引いた。
「半兵衛、俺は…」
「…」
「俺は俺の時間を半兵衛のために使いたいんだ…」
「…うん」
「いいかな…秀吉だけじゃなくて俺のそばにもいてほしいんだ」
先程とは打って変わって頼りない表情を浮かべる慶次に、半兵衛はくすりと笑った。
「仕方ないね」
今度は半兵衛から軽く口付ける。二つの驚きに一瞬戸惑った慶次だがすぐにその顔は喜びの表情に変わりまた半兵衛を抱き締めた。
ーー仕方ない、そう仕方ないないのだ。
やっと自分でも気付いたのだから。毎度毎度勝手に部屋に上がられても、会う度に悪態をつき合っても、体に触れられ女人のように扱われても、決して嫌ではなかった。半兵衛はこの歳になっても素直になれない己の性格に苦笑した。
「慶次君…そろそろ…もう苦しいよ、色々」
「あぁ、ごめんごめん。そうだな」
まるで子犬のようにはしゃぐ大男の髪を撫でる。さすがにもうお預けは苦しいと素直に告げると、慶次はちゅ、と頬に軽く口付けて足を抱え直す。根元まで入れたとはいえそこはかなり狭くきつい。ゆっくり引くと熱い粘膜がまとわりつき慶次の魔羅を刺激して射精を煽るように締め上げる。
「はーっ…」
深く息を吐き、今度は前後に律動を始める。少しずつ解れてきた半兵衛の中は熱く心地よい。自身の先走りもあってだんだん滑りがよくなってきた。
「あっ…はぁっん…んんっ」
「っ…はぁ…」
苦しそうだった半兵衛の声には艶も混じり、時折中の前立腺を掠められてより高い声で鳴いた。律動しながら中心を扱えば快感から逃れようと身をよじらせる。
「やぁっ…そこ、いじらなっ…」
「この方が気持ちいいだろ」
「はっあっ…っ…も、いあっ…」
苦痛からではない涙で目元が潤む。体をぶるぶる震わせている半兵衛を見て慶次は限界が近いと悟った。実際慶次も相当な汗をかきながら押し寄せる射精感に耐えていた。扱う手を荒く激しく動かし、同時に律動も早める。
「いつでも、いいよ…っ」
「ひっ…はっ…あ…あああぁぁぁあっ」
「っ…くっ…」
白い体を反らせて半兵衛が果てるのと同時に、慶次もその中へと欲を放った。
小刻みに身体を震わせ欲を放ち終わっても中はきゅうきゅうと締め上げる。まだ名残惜しい気もするが半兵衛の体を気遣いずるりと魔羅を引き抜いた。自分の欲で腹を汚し息をきらせている半兵衛がやたらいやらしくて、じっと見つめていると惚けていた瞳がきっ、と睨み返してきたのでそそくさと視線を逸らした。
慶次はとても事後とは思えないくらいてきぱき動いた。手拭いを濡らして体を清め、着物を着替えさせ、布団を敷き、そこへ半兵衛を寝かせて当然の如く自らも隣りに添い寝した。
「…段取りがいいね」
「へ?あ、まぁ、な…」
遠回しに経験豊富だと指摘され慶次は少し気まずそうに笑う。特に咎めているつもりもないので半兵衛も軽く笑うと目を閉じた。
「疲れた」
「ごめんな、無理させて」
「そう思うなら…」
「はいはい分かりました、申し訳ございませんでした」
もう言われることは分かっていると最後まで聞かずに返事をする。いつもならここからしばらく口喧嘩が続くのだか今日は本当に疲れていて半兵衛ももう何も言わなかった。
「今日はよく寝れるだろ、ゆっくり休んでくれよ」
「うん」
「そんで、明日もゆっくり休めよ」
「…ん」
「また一緒に寝てもいいか?」
「…仕方、ない…ね…」
そう呟くと静かに寝息が聞こえてきた。銀色の髪をかき分け、汗も引いた額に口付ける。寒くないよう布団を掛け直し、慶次もまた眠りの世界へと落ちていった。
残る時間が少ないのなら、その最後の瞬間まで君と共にありたいと願う。
「やはり君は言ってることとやってることが滅茶苦茶だよ」
「な、なんだよいきなり」
「まず告白の前に体を繋げるなんて順番がなってないよ」
「う…っ」
「まずは使用人に手紙を渡し何度かやり取りを繰り返しその後交際を申し込んで」
「古っ!!!」
「あと昨日は三成君留守だったらしいよ、よかったねその首が飛ばなくて。今晩も無事繋がっていられるかな」
「なにそれ怖い」
end
頭は良くても恋に鈍感な半兵衛が可愛いなと思います。
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