主に半兵衛受けのお話が多いです。
渇き 10
渇き 10
渇き 9の続き、モブ半
白を基調とした内装の社長室に通された半兵衛は客人用のソファに腰掛け向かいのテーブルに資料を広げる。そのテーブルの先で同じくソファに腰掛ける中年の男がこの会社の社長である。半兵衛はいつもと変わらず物腰柔らかな口調で契約内容や今後の方針を説明しながらも決して油断をしないよう細心の注意を払っていた。男は半兵衛の話を聞きながら紅茶の注がれたティーカップに口を付ける。
「いかがでしょうか、御社にとっても悪い話ではないと思いますが」
「ふむ……」
カチャンと音を立て男が受け皿にカップを置くとそのまま資料を手に取り再び内容を確認し始めた。急成長したとはいえ全く新しい企業と手を取るのはなかなか腰が重いものだと理解しているため半兵衛も答えを急かすようなことはしない。相手が納得するまで説明も提案も何度もするつもりだった。最終的にはどの企業も従い豊臣株式会社の為になるのも分かっているからだ。
「……」
「……」
しばらく二人の間に沈黙が流れる。説明の間に少し冷めてしまった紅茶に半兵衛も口を付けた。程よい甘さが口の中に広がりやや渇いた喉を潤してくれた。その間、何気なく社長室を見渡してみる。壁や天井は無地の白で統一され、その下にある床にはグレーのカーペットが敷かれている。そして半兵衛達の座るソファやテーブルと社長がいつも使っているであろう部屋のやや奥にあるデスクや棚は黒で統一されている。シンプルな色合いにシャープなデザインの家具を置くあたり、インテリアには少しこだわりがあるのだろうと半兵衛は思った。部屋への入り口の方を見れば先程秘書だと紹介された美しい女性が立ったまま二人の会話を聞いていた。二人に紅茶を出してくれたのも彼女だ。
「よしわかった」
男の声に半兵衛が視線を戻す。資料から目を離し男は柔らかい笑みを浮かべ半兵衛と目を合わせる。
「この話、是非受けさせてもらおうかな」
「それは良かったです、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」
男から差し伸べられた手を半兵衛も握り、商談成立の祝いにお互い握手を交わす。そこから軽い談笑をしながら半兵衛は鞄から契約書を出し男へ渡した。
「ではこちらを」
「あぁ、ありがとう」
豊臣の為になるとはいえあくまでもこちらは新参者。下から出る態度を変えず、契約をしてもらうという姿勢で半兵衛は話を進める。
「おっと、判子はあっちだったか」
契約書に署名をし、あとは印鑑を押すだけだったがどうやら印鑑は奥のデスクにあるらしい。すまないねと言うと契約書を片手に男がソファから立ち上がりデスクへと足を進める。構いませんよと微笑みを浮かべ、待っている間に半兵衛は残りの紅茶を飲み干した。
「……おや」
不意に男が何か疑問に思ったらしく、再び契約書に目を通し始めた。
「何かありましたか?」
「いや、すまないがちょっとここを見てくれ……これはどういうことだろうか」
契約書をデスクに置き男が手招きをする。呼ばれるがまま半兵衛もソファから立ち上がり男の隣へ足を進める。
「いかがなさいましたか?」
「ほら、ここなんだが……」
隣りに立つ半兵衛が契約書を確認しようと腰を屈めた瞬間、 男は契約書を払い退け代わりに半兵衛の背中を乱暴に押し付けた。
「!?」
突然の衝撃に半兵衛が驚いていると男はぐるんとその体をひっくり返し仰向けで押さえつける。上半身がデスクの上に乗り下半身はつま先がギリギリ床に着くくらいという苦しい体勢だったが、半兵衛はその顔に不安や苦しさを一ミリも浮かべなかった。油断したと内心自分の愚かさを悔やみつつも、やはりそうなるかと諦めも感じていた。
「あぁ、探したんだよ」
先程の柔らかい笑顔はどこへいったのか、欲にまみれニヤついた表情を浮かべながら、男はスルスルと半兵衛の付けていたネクタイを解く。
「君があそこからいなくなってものすごく寂しかったんだ……だが君はまた私の前に現れてくれた、私はとても嬉しいよ」
「……」
息を荒げながら気味の悪い独り言を続ける。男は慣れた手つきで細い両手をネクタイで縛るが、半兵衛に逃げるつもりは毛頭なかった。会社同士の契約のこともあるしここで問題を起こしては他の企業からのイメージが悪くなってしまう、何よりこの会社の名前を聞いた時点でこうなることはある程度予想していた。
「会いたかったよ、重治君」
男は平蜘蛛にいた頃の常連客の一人だった。
『此度の取引先だが、我は伊達の会社へ行かねばならぬ故共に行けぬ……その代わり必ず三成か誰かを連れて行け。決して一人では行くな』
前の日の晩、共に食事を取りながら秀吉が念を押していた。何気なく会話の流れで今回の取引先の社長が平蜘蛛時代の常連客だと半兵衛が漏らすと秀吉の顔色が変わった。始めは自分が共に行こうと申し出たが、伊達との打ち合わせには秀吉が行く必要がある為半兵衛は断った。するとどうにか三成なり誰かを連れて行くようにと、しつこく念を押してきたのだ。
『あぁ分かった、もうそんなに心配しなくても大丈夫だよ』
豊臣株式会社には過保護な人が多いんだねと半兵衛は笑う。
ちゃんと言いつけを守っておけばよかったな、と天井を眺めながら半兵衛は少しだけ後悔をしていた。ちらりと部屋を見渡せば、先ほどまでドアの前に立っていた秘書はいつの間にか部屋から姿を消している。抵抗する間もなく剥ぎ取ったスラックスとズボンは床に投げ捨てられた。デスクに仰向けに転がる半兵衛の脚の間では、先程から執拗に男が半兵衛の肉棒をしゃぶり続けている。細い両足をデスクに乗せ開脚させると、閉じられないよう男はその間に身体を滑り込ませ中心にある肉棒を頬張った。きっちり着込んできたスーツとシャツは丁寧にボタンを外され白く薄い胸板が見えるように惜しげも無く広げられている。その首筋や胸元には男が付けた鬱血痕がいくつも浮かんでいた。
「っ……あ、ぅん……」
平蜘蛛を出て以来、こういった性に関する出来事がなかったためか、久しぶりの刺激に思わず悩ましげな声が漏れる。
「気持ちいいんだね重治君。こんなに溢れさせて」
肉棒から口を離すと亀頭から溢れ出た先走りを指で掬い、半兵衛へ見せつけるように糸を引く。ネクタイで縛り上げられた手を下すこともなく半兵衛は男にされるがまま身を任せた。契約のこともあるが、身体を使うという行為にはすっかり慣れっこだった。
「あ、っ……んんっ、は……」
所詮僕はこういう人間なんだ、意思とは関係なく男に与えられる刺激に素直に反応する己の身を、心の中で情けないと見下し嘲笑う。どんなに綺麗な装いをしたところで、奥底にある自分の浅ましい部分は消えない。政宗との関係が終わっても、平蜘蛛を出ても、秀吉の元で新たな人生を歩み始めても、男に弄ばれ喜ぶ自分の性は隠せないのだと。
「よしよし、いい反応だ」
今度はぬちぬちと音を立てながら半兵衛の肉棒を上下に扱う。
「あ……は、あっ……!」
強く弱く、早く遅くと変則的に腰を駆け巡る快感に声が漏れる。その刺激に耐えるように、半兵衛は縛られた両手をぎゅっと握る。そしてふと違和感を覚えた。久しぶりとはいえ男から与えられる一つ一つの刺激に異常に身体が跳ねる。感覚が冴え過ぎている。身の内からじわじわと湧き上がるような疼き。
「あ、っ……んぅっ」
余所事を考えているのが不満だったらしく男が集中しろと言わんばかりに、半兵衛の唇を奪い舌を深く侵入させた。ただそれだけなのに身体中を駆けるように快感が遡る。望まない快感に半兵衛は困惑した。秀吉ならいざ知らず、なぜこんな男に触れられ自分の身体はこれほどまで喜んでしまうのかと。
(……秀、吉?)
半兵衛の思考が止まる。
「重治君もっと足を開きなさい」
男は薄い唇を解放し、返事を待つことなく半兵衛の両足をより大きく広げる。デスクの引き出しへ手を伸ばし、取り出したローションを垂らし半兵衛の後孔へ指を這わせる。この後の快楽が待ち遠しいのか、息を荒げながらも艶かしい身体を傷付けないようゆっくりと執拗に熱い肉壁を撫で解す。
「っは……ああ、ぁっ……うぅ……っ」
(何故、今……秀吉なんだ?)
与えられる刺激にどこかへ飛んで消えそうになる思考を半兵衛は必死に捕まえる。頭の中に浮かんだ男の名前、何故自分は彼を思い浮かべたのだろうか。
「君が身請けされたと聞いてショックだったよ、でもまたどこかで会えるんじゃないかと思ってね、これも取っておいてよかった」
「ん、うんんっ……待っ……あ……ッ」
男が半兵衛の顔を覗き込みながらうっとりと呟く。閉じられることが少なくなった口から悩ましげな喘ぎ声と唾液が溢れ出る。自分の後孔を蠢く指、その動き全てが気持ち良い。一つ一つの刺激に反応する半兵衛が愛おしくなり、男は額や瞼や頬など身体のあらゆる箇所に唇を落とす。
「あぁっ……ひ、あ……んぁ……っ!」
男が顔を覗き込み何か囁く度、無意識に半兵衛は男と目を合わせるがその言葉は全く頭に入って来ない。熱に浮かされたようなぼうっとした感覚が、半兵衛の思考力を削いでいった。
「君の好きな所も覚えているよ」
「ひっ、……あぁぁッ!!!」
そう言って男の指がゴリっと前立腺を押し上げた途端、半兵衛は弓のように仰け反り一度目の絶頂をした。悲鳴のような声と共に肉棒から白濁が放たれ半兵衛自身の腹を白く汚す。
「あ……は、ぁっ……」
びくりと身体を震わせ残りの白濁を吐き出しながらまた半兵衛はぼんやり天井を眺める。
「はぁ……重治君、君はとても綺麗だ。悪いがもう少し待ってくれるかい」
「っ、ん……」
空いた手で半兵衛の髪を撫で男は再び深く口付けをする。舌を絡ませながら後孔を愛でる指を一本、また一本と増やしより柔らかくなるようにと、そして先程とは違い前立腺を避けながら自身が挿入しやすいようにと解していく。達したばかりの身体は与えられる刺激により素直に反応し半兵衛の思考をぼやけさせる。
「ふ、んんぁ……いや、だ……あぁっ……ッ」
(僕は今、なにを、なぜ……)
しっとりと汗ばんだ肌を味わうように男は白い身体に舌を這わせる。太い指が三本収まるくらいに解けてくるとずちっと音を立てて指が引き抜かれた。
「あ……っ」
強引な排泄間にも悩ましい声が溢れる。決して望んでいるわけでもないのに、咥えるものをなくしたそこは何かを欲するようにひくひくと蠢く。
「ほら、もう少し足を開きなさい」
細い両足を抱え直し男は自分の下半身へと手を伸ばす。この先何をされるのかは身体が覚えている、無意識に身体が熱を期待して疼く。
「はっ……あ、っ……」
男はズボンとスラックをずらしはち切れんばかりに膨らんだ肉棒を取り出す。それを片手で軽く扱うと、ひくひくと蠢く半兵衛の後孔へとあてがった。半兵衛が思わず唾を飲む。
「ゆっくり息を吐きなさい」
「ッ……あっ……は、あァっ……」
ズズズと男はゆっくりと肉棒を押し進める。熱く硬い物体を肉の壁が程よい力強さで締め付ける。慣らしたとはいえその質量は半兵衛にとって少し苦しかった。痛みを感じないようにと必死に息を吐き力を抜こうと努めた。
「はぁ……はぁっ……」
ゆっくりだが中を侵食する肉棒の感覚に半兵衛の身体が震える。男は肉棒の半分程までを半兵衛の中に収めると、突然勢いよくその肉棒を半兵衛の奥めがけて突き立てた。
「っああァッ!」
半兵衛が仰け反り短く悲鳴を上げた。緩めようとしていた身体に力が入る。
「あぁ懐かしいなぁ、この感触、熱さ」
「っは……ぁっ……ッ」
「その顔も……あぁ綺麗だよ」
突然の圧迫感に口をパクパクさせて身体を震わせる半兵衛を愛おしいそうに男は見つめる。半兵衛は焦点の合わない目を男の方に向けてみるが、無意識に涙が出ているのかぼやけてしまいよく見えない。その様子を違う意味で汲み取ったのか男はわかってるよ、と微笑みかけるとゆっくりと律動を始めた。
「あァッ……ひ、いンっ……あっああっ……!」
指とは違う質量の出入りに後孔は喜ぶように畝る。ぱちゅんぱちゅんと肉のぶつかるリズムに合わせて、半兵衛が熱のこもった鳴き声をあげる。先程欲を放った半兵衛の肉棒はまた硬さを取り戻し先走りを垂れ流していた。
「重治君、あれを聞かせてくれないかい?」
それに気づいた男はニヤリと笑いその肉棒を片手で掴むと、親指で先端に円を描くようにクルクルと擦った。
「はぁあッ……い、あぁッや、……んああッ!」
「ほらこういう時、なんて言うんだったかな」
「あっ……ああァッ……ひあぁっ、んんッ……!」
「重治君」
執拗に先端を責めながらも腰の律動は止めない。考える間もなく与えられる刺激に半兵衛の身体が落ちていく。
「あぁッも、……ぁあッイ、くゥ……イきま、すッ……イっちゃぁ……ッ!」
「はい、よく言えました」
髪を振り乱して快感に溺れゆく半兵衛を見て男は満足そうに笑う。そして円を描いていた親指を先端の割れ目にごりっとねじ込んだ。
「ッあぁぁぁァァッッ!!!」
再び半兵衛が悲鳴を上げる。白い身体を弓のようにしならせ、握られた肉棒から白濁を吐き出す。出口を塞がれたそれは半兵衛の胸や腹、太ももに飛び散り、肉棒を伝い根元を白く汚した。
「ッ……く、ゥ……!」
ニ度目の絶頂でさらに締め付けを増した半兵衛の中で男も果てた。何度か大きく身体を震わせながら半兵衛の中に欲を放ち、それが落ち着くと一滴も残さんと言わんばかりにゆるゆると腰を動かし、残りの白濁全てを注ぎ込んだ。半兵衛の意思とは関係なく、そこは男の欲を飲み込むように畝り、男を喜ばせた。
「はぁ……はぁ……重治君、愛してるよ」
男は惚けたままの半兵衛の額に張り付いた髪を分ける。そして身勝手な愛の言葉を囁いて少し開いたままになった唇を食む。
「ん……」
軽い口付けにも半兵衛は声を漏らす。
「そうだ」
ふと男が何かを思いつきデスクの上を漁りだした。あったあった、と呟く男の手には携帯電話が握られていた。そしてそれを半兵衛の方に向けると間をおかずカシャッ、という電子音を鳴らした。それに反応して半兵衛が音の方に顔を向ける。
「あ……」
「大丈夫だよ、重治くん。君がいい子にしていればね」
不安そうな声を出す半兵衛を宥めるように男が銀髪を優しく撫でる。
「二人の再会の記念に……ほら繋がってるところもしっかり撮っておこうね」
半兵衛の返事など待つこともなく男は嬉々として電子音を連続して鳴らす。時折半兵衛と視線を合わせる男の目には未だ欲の炎が消えずに残っていた。
「……あ……あぁ……」
徐々に声を漏らし始めた半兵衛の声に男は手を止めた。先程の行為で潤んだ瞳は困惑の色を浮かべている。
「重治君?」
「ぁ……」
「少し量が多かったかな」
焦点の合わない半兵衛の顔を覗き込み、男が軽く頬を叩いてみるがそれに対する反応はない。男の顔を見ているようで見ていない。困惑に揺れる紫の瞳から光が消え曇る。
『大丈夫だよ』
(知っている)
『君がいい子にしていればね』
(これ、前にも聞いた)
『さぁ、補習を始めようか』
(貴方は……)
半兵衛の頭の中に懐かしい風景が蘇る。白い壁の建物、少し開いた窓から入る風になびくカーテン、机に散らかる本や資料の山、椅子に腰掛けこちらに笑顔を向ける白衣の男。人の良さそうな柔らかな笑顔、だがこちらを見つめる瞳の中にはギラギラと燃えるような炎が宿っていた。
『おいで半兵衛』
男の声が耳にこだまする。
「先、生……」
紫の瞳から一筋の雫がこぼれ落ちた。
To be continued...
次回は少しだけ半兵衛の過去に触れられたらと思います。半兵衛様が抵抗しないのは会社や秀吉の為でもあるけど、自身がこんな扱いを受けてしまう運命に抗う気がないからです。諦めちゃってるんですねきっと。
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