名前がきてからオレたちが始めて任務がなくて一日中家に居ることになった日、オレたちはようやくあの日のことを名前に聞くことにした。

「名前、バジル…話があるからこっちに来てくれないか?」

バジルは何を話すのか勘付いたようで真剣な顔付きになった。名前は名前でなんとも言えない顔をしている。

「話って何?家光さん」
「まぁ取り合えず座れや」

全員が座ってから本題を持ち出した。

「名前、今更こんなこと聞くのもアレなんだけどな…あの日のこと、教えてくれないか?」
「あの日?」
「君が、オレたちの前に現れた日だ」
「?、どーゆーこと?現れたって何?あたしは二人に助けられたんでしょ?」
「言ってることは間違ってねぇけど、上から落ちてきただろ?」
「は?上?」

何故だか名前と話が咬みあわない。見かねたバジルが説明し始めた。

「拙者たちが始めて名前に会ったとき、名前は拙者たちの真上から落ちてきたんですよ」
「え!?何ソレ!本当!?」
「本当です。あの日は雨が降ってましたし、結構印象強く覚えてます」
「え?雨?」
「ええ。土砂降りでした」
「うそ…」

険しい顔をして考え出した名前にオレとバジルは顔を見合わせた。

「なんか、あったのか?」
「あたしね、いろいろあって崖から落ちたんだ。落ちてる途中に気失って…でもその日は気持ちいいくらいに晴れてて、雨なんて降る気配なかったし」
「おかしいですね。あの日はここらへん一帯は雨だったはずなんですが」
「崖から落ちた、って何でだ?」
「追われてた」
「誰に?」
「………」

聞くと名前は黙り込んだ。言っていいのか、とでも言うように、辛そうに顔をしかめて。

「…それを」
「ん?」
「それを言わなきゃ、駄目かな?」
「名前…」
「言わなきゃ、もうここにはいられない?」

そんな必死な目で訴えかけてくるもんだから思わずそんなことねー、としか言えなかった。そう言えば名前は安心したようなホッとした笑みをオレたちに見せた。

そこでオレはハッとした。オレはなんてことをしてるんだ、って。名前はまだ子供で、ここには身寄りがなくて、不安なんだって。オレたちぐらいしか頼れる人がいなくて、その存在を手放したくないんだって。この子にはまだ、オレたちが必要なんだって。

まだ幼い君の小さな不安

「しけたコト聞いちまったな名前!気にすんな。オレたちはそんなことぐらいで見捨てたりしないさ」
「ほんとう?」
「ああ、本当だ。な?バジル」
「ええ、そうですよ。名前が拙者たちを必要としてくれてるように、拙者も親方様も名前が必要なんですから」
「…ほん、とうに?」
「ったく!バジルのやつ。いいとこ全部持っていきやがって。あ〜ぁ、バジルが泣かせたー」
「え!?ちょ、名前!すみませんッ!拙者のせいですか!?」
「うわーん!」

この子は今日本にいるオレの本当の息子と同じくらいの年齢なんだろうな。抱き寄せて頭と背中をよしよし、となだめると少しは落ち着きを取り戻したようだ。

そのときバジルと目が合ったが、オレたちはどうやら名前に過保護のようだ。あーぁ、どーしたもんかなぁ。

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