オレはいったい何がしたいんだろう。名前が部屋に行った後、静まり返ったキッチンでは沈黙が続いた。
「親方様、どうしてあんなこと」
「…あいつ、何も聞かないで欲しそうに…それでも話は聞いて欲しそうにオレを見てたから」
「ですが親方様!名前は本当に何者かわからないんですよ?!」
そうだ。実は名前を拾ってスグ、名前の素性を調べた。だが不思議なことにイタリアにも日本にも、この世界中のどこにもあの子を証明するのもがなかった。だから名前自身が自分を証明するものがないと言ったときも納得できた。
戸籍もなけりゃ写真も名前も無く、まるで名前の存在自体が初めから無かったかのように。じゃああの子はどうやってここへ来たんだ?ってなる。
空から落ちてきたから本気で天使なんじゃないかって思ったがそんなの有り得ないしオレは天使とか神など信じない。
でも説明がつかない。悪い子ではなさそうだし、第一嘘をついてるようには見えない。
「バジル」
「なんですか?」
「おめぇはどう思う?」
「名前…ですか?」
オレだけの判断であの子を日本に行かせるわけにはいかない。今まで普通に過ごしてきて怪しい点なんてなかったが、オレたちが任務で居ない時に何してるかわかんねぇし。
日本には暗殺で行くかもしれねぇ。そんな考えばかりが浮かんで、溜息が出る。やっぱ職業上そーいった類(たぐい)でしか考えられないのも悲しいもんだ。
「拙者は…今まで名前を見てきて敵だなんて思ったことはありません。何回か探りを入れたことはあるんですが…なんていうか、笑顔で答えてくれる彼女を見ていつも後味が悪くなります」
苦笑いで言うバジルにそうか、と言い名前の部屋に行った。お前がそこまで言うなら大丈夫かもしれんな。
「名前、入るぞ?」
「どうぞー」
部屋に入り目を合わせて少し重い空気にすると、どうしたんですか?と聞いてきた。
最後に少しだけ
「聞きたい事があるんだけどよう」
「うん、何?」
「お前は…」
一体どこから来て、一体何処に行こうとして、一体何者なんだ?それがもし言えなくても。
「家光さん?」
「…笑って生きていけるか?」
「え?」
「それが約束できるなら一つお願いしたい」
「お願い?」
「並盛についたら、ある子供と仲良くしてやってほしいんだ」
まだオレの息子と明かすわけにはいかないけど。だけどこの子と綱吉が巡り会うとして、アイツに課せられる重荷が減ってくれることを祈ろう。
「約束、できるか?」
「…うん…なんかよくわかんないけど約束するよ。家光さん」
「ふっ…そうか…頼みたい子供ってのはだな…沢田綱吉ってヤツなんだ」
「え!?沢田綱吉!?」
「なんだ?知ってるのか?」
「あ、いえ!知ってる偉人の名前に似てたからびっくりしちゃって…!その子供って家光さんの息子さんなの?(アブネー!言いかけたって!)」
それを言ったら、綱吉のためにならない。今はまだ、明かすべきではないからな。
「いや…違うが。オレが一方的に知ってるだけだからな…」
「あ、そうなんだ…わかった…沢田綱吉だね?出会えるかはわからないけどもし出会えたら友達になってみるよ」
「ああ、頼んだ…じゃーな。明日に備えてゆっくり眠れ名前」
頭を撫でてやると寂しそうな目をしながらありがとう、と笑った。不覚にもその顔に魅入ってしまって一瞬動きが止まってしまった。
その後バジルを呼んでほしい、と言われたので部屋を出てバジルを呼んだ。少ししてから名前の部屋からバジルの無理です!という声が聞こえてきた。
あぁ、多分最後だから一緒に寝てくれとか言われたんだろうな。いいな、なんて思わねぇぞオレは!
(いや、でも、ちょっと羨ましかったり)
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