もしも簓と朝チュンしたら

「…んっ…」

目が覚めて
まだ動きの鈍い脳みそにうっすらとした視覚から情報が伝わる

そして

一瞬で目が覚めた

「は?」

まず、私の頭の下にあるのは枕ではない
人肌の温かい腕枕だ

そしてその腕枕の主、今話題となりつつあるオオサカディビジョンのリーダー
白膠木簓が今私の目の前にいる

それも恐らく、きっと私と同じ、全裸で

(え???何で…???)

昨日飲み屋でたまたま隣に居たのが簓さんで
酒の勢いもあってか会話が盛り上がってしまい、それは楽しい夜だったし
美味しいお酒が進みに進んだ

そして、進みすぎて途中から記憶がない

「ん…朝か…?」

まだ私が情報を処理しきれていないのに簓さんが起きてしまった
しかし糸目のせいで寝ても起きてもあまり変わらないのが分かりにくい

「ん?なまえちゃん?え?どないしたん?」

ああ、彼もまた現状を理解していない

「えっ?!てか俺裸やん?!え、もしかして、なまえちゃんも?!」
「はい、私も同じく裸なんですよね」

私に腕枕をして、お互い全裸で
これはまあ、きっと昨晩はお楽しみだったのだろう
記憶はないけど

腕枕を気にしてか、相変わらず近い距離で簓さんが慌てふためいている
あかん、どうしよ、ええ…と時折漏らしてる
そうだよなあ、いけないよねえ、簓さんオオサカじゃ有名らしいし

「あ、あのなまえちゃん!!!ホンマ、ホンマごめん!!堪忍!!」

ガバッと起き上がったかと思うと、そう声を張り上げ
簓さんは床で土下座をはじめた

「え?!ちょっ簓さん?!」
「何も思い出せなくてほんと申し訳ないんやけど…絶対なまえちゃんを傷物にしたやん…
ほんま…責任は取るから…」

とりあえず落ち着いて欲しい
全裸で土下座とか、動きが早かったからギリギリ見えなかったけども
え、てか責任って?

「あの、責任って具体的にはどう…?」
「そりゃ結婚しかあらへんやろ」

まさかの即答だった

ディビジョンバトルに参加する程の人で
有名人にも関わらず私のような一般人に対してこの人は躊躇い一つせず
当たり前のように答えたのだ

「…実は私は彼氏いるんですが」
「ウソやろ?!あかん、どないしょ…とりあえず彼氏さんにも土下座して…
一発殴ってもろて…いや一発じゃ足りへん…えっと…」

そうやってまた真剣に考え出した簓さんを見て
思わず笑ってしまった

「冗談ですよ、彼氏はいません」
「ホンマ?!はぁ〜…冗談きっついわぁ…いやだからって許される訳じゃないんやけど…」
「んー、でももしかしたら私達に間違いはなかったかもですよ」
「そんなんありえるか?うら若き男女が、裸で、ラブホで、一晩!明かしたんやで?」

まあ確かにそうなのだがお互い何も覚えてないし
全裸ではあるがよほど大事に抱かれたのか、はたまた本当に抱かれてないのか、体に気だるさや違和感がないのだ
もしかしてはありえると思う

「そもそも結婚と言っても…私が簓さんを好きになると限らないし」
「えぇーっ?!自分厳しいなあ…簓さんも傷つくで…」
「だからまずはこれから一緒に朝ご飯食べに行きましょ、シラフのお食事からはじめましょうよ」

うっかり間違いがあった時はまたその時考えよう
まずは私は彼を知りたいと思ったのだ

「ホンマに?まあ、たしかに順番は大事やしな…
ほなまずはデートからはじめよか!」
「わー!いきなり立ち上がらないでください!!!見える!!!見えるから!!!」
「あ、せやった。にしてもなまえちゃんは良い子やな〜
昨日も楽しかったから飲みすぎてもうた訳やし、俺もなまえちゃんの事もっと知りたいわ」

そうやって笑う彼を見て
私はもう既に恋に落ちそうな気がしたが自分から言い出した手前、今からでもきちんと順番は踏もうと思った



結局間違いの有無は分からなかったが、それでも二人が結婚したのはまだまだ先のお話し。