タバコの話

「なまえ、タバコ吸ったやろ」
「…吸ってません」

これは定期的に躑躅森家で行われる攻防の一つだ
さすが盧笙、先生なだけあるわ
言い方が様になってる

「嘘つくなや、電子タバコに変えたってわかるんやぞ」
「あーーー盧笙めんどくさいーーーー良いじゃんタバコくらいー!私大人だよー!」
「ダメなもんはダメや」

私は喫煙者だが何故か昔っから盧笙は私の喫煙に対して良い顔をしない
以前までは簓も吸っていた為、何とか喫煙者側の意見を通していたが簓が禁煙した今
私の立場が最も弱くなってしまった

そして今日もこのように詰め寄られている
ちなみに仕事終わりに吸ったのだ
嘘ついてごめんね盧笙

「盧笙の家ではちゃんと禁煙してるのに…」
「それは禁煙って言わへんわ」
「せやで〜なまえ、タバコなんて止めるのが一番や」

以前までは盧笙の家の換気扇の下にも灰皿があった
最初は気を使ってベランダで吸っていたのだが真冬でもベランダ吸っていたら翌日には換気扇の下に灰皿が設置された
吸って欲しいのか吸って欲しくないのかよく分からないなとその時は笑ったが
簓の禁煙に伴い灰皿は完全に撤去され
ついには私すらも禁煙を迫られている

「はぁ、簓がタバコ止めてから肩身狭いわ…切れた時に一本ちょうだいも出来ないし…」
「なまえ一本どころかひどい時箱ごと持っていってたやろ、忘れんからな」
「ううー…簓また一緒にタバコ吸おうよお…盧笙に隠れてコソコソやろうよ…」
「お前は不良学生か。はい、没収ー」
「ちょっ!電子タバコで没収はキッツイ!!!」

私のタバコをヒョイと取り上げられてしまえば、身長180cm超えの盧笙から奪う手立ては無く
その長い手で高く掲げられた日には私はおろか簓だってどうやったって届かない
私のタバコなのに何て事をするのだ

「てか何でそんなに私の喫煙について二人ともうるさいのよ。簓なんて元々吸ってた癖に」
「何でってそりゃ…」
「俺も盧笙もなまえには長生きして欲しいからなあ」
「はぁ?何その理由」
「ま、せやな。俺もなまえには長生きして欲しいわ」
「…意味わかんない。あーあ、天谷奴さんにタバコ貰いに行こうかなあ…」
「よりにもよって零から貰うとかやめときや、おっさんがうつるで」
「天谷奴さんくらいイケてるおじさんならありだと思うんだけどなあ」

タバコが吸えないストレスで逆に寿命が縮むのではなかろうかと思うのだが
その辺はこの2人にどうにかしてもらおう

それは勿論、私が長生きした分2人にはずっと一緒にて貰いたいからだ