▼ジェミニ過去編:誕生日
長編のベース設定要素が強いので、果たしてこれは夢なのか分からなくなったので一旦こっちに。----------
誕生日は、あまり好きではなかった。
小さい頃、親戚を招いて家で誕生会を開いていた。毎年その日だけは両親も揃って帰ってきて、パーティを行う日になっていた。
最初は何の疑問も持たなかった。主役は僕たちなのだから、何もおかしくはないと思っていた。
気づいたのは、いつだっただろうか。ある年の誕生日、ある親戚が僕にプレゼントを手渡してきて、席を外していた君が丁度戻ってきた、その時だった。
「二人で使ってね」
この人は何を言っているのだろう。同じものを君にも渡したのではないのか。思わず、君の顔を見ると、一度目が合って、すぐ目を逸らされた。わざとだ。その様子で確信した。これは僕にしか渡されていない。それどころか、今までのプレゼントはほとんど僕にしか渡されていないのではないかという疑念を抱いた。
大人はどうして僕ばかりに与えて、君の分を用意しないのか、わからなかった。
貰ったものを二人で分けようと提案した。けれど君は、いらないと言って聞かなかった。それは皆が僕のために選んだものだからと。わかっているけれど、納得はいかなかった。
僕と君は一緒のはずなのに、大人たちはそうしてくれない。それを気にしたのだろうか、君は誕生日の時期になると、体調を崩して寝込むようになった。
一緒に祝ってくれない皆なんていらない。だから僕は誕生会をやめるように親に進言した。仕事で忙しい両親はすぐに理解してくれた。親戚方にプレゼントも不要だと連絡してもらった。これで、大人から祝われることも、大人側の負担もなくなった。
そして、僕は小遣いで買ったプレゼントを手に、その年も同じように体調を崩して寝込んでいる君のもとに向かった。
◇
誕生日が嫌いだった。
同じプレゼントを用意してくれるとか、別々に用意して、一緒に祝ってくれる人はまだいい。ほとんどの人は、リオの分だけを用意して、私に気づいては、二人で使って、なんて言うのだ。私は常にリオのついでだった。今でこそ、二人分を用意するのが大変だからと理解できるけれど、リオにだけ与えられ、自分には与えられない状況に、私を覚えている人などいないのだとふてくされていた。
私も同じ日に生まれたはずなのに、それまで一番に祝われたことがなかった。親戚も、親でさえも。普段から、大人たちは長男であるリオの方が大事なのだから、仕方のないことだった。
いつしか、私は誕生日というものが嫌いになった。幼少期、親戚向けにと毎年開いていた誕生会には、気分が悪いから、体調が悪いから、と休むようになった。最初は仮病だった。けれどいつしか、毎年誕生日が近づいてくると、当たり前のように自然と体調を崩すようになった。精神的な苦痛が、そのまま体調に出るようになったのだ。
誕生日の夜には、リオが貰ったものを見せてくれた。リオが貰ったプレゼントを私に見せるのは、それを知ってのことだろう。毎度二人で分けようと言ってきた。それは皆がリオのために選んだものだから、と私は毎度断った。言葉通りの意味もあるし、分け与えられたとして、使うたびにこれはリオのものだと思い出して、惨めな気持ちになるだけだとわかっていたからだ。
そんな毎年の当たり前が続き、いつの年だっただろうか。その年の誕生日は、リオが私にプレゼントを持ってきた。また貰い物を分けにきたのだろうと、私は断った。けれど、
「僕が、選んだんだ。だから、その…受け取ってもらえると、嬉しい」
意味がわからなかった。リオは祝われる立場、言わば主役だ。誰かを、まして私を祝う必要はないはずだ。
リオの行動で気がついた。リオも私も同じ日に生まれたのだから、お互いを祝わなければおかしい。私に足りていなかったのは、リオを祝うことだった。いつもリオばかりが祝われているから、私が祝う必要はないと思っていたけれど、そうじゃない。リオは最初から、私に分け与えようとしてくれた。それを私が拒否したから、今度は自分で選んで、プレゼントを用意してくれた。それが、誰からも祝われない私を不憫に思っての行動だとしても、リオはずっと私を祝おうとしていたのだ。リオは私を祝ってくれる、唯一の人だったのだ。
嬉しいけれど、私は何も用意していないから受け取れない。私はそう言ってもう一度断った。
「じゃあ、体調が良くなったら、一日僕と一緒にいて」
「…いつもと変わらなくない?」
「いいんだ。今日は一緒じゃなかったんだから」
2020/10/18