画伯未満のプライドにつき


本日、ハロンタウンには雨が降っている。
いつも晴れているイメージだったから変な感じ。
ゲームの中では常に快晴だったんだろう。
あんま覚えてないけど。

「ホップ何してるの〜?」
「雨で外行けないから、絵描いてるんだぞ」

リビングに降りると、ホップが床に座って何かをしていた。
ヌメた(inボウル)を置いて、その背中に抱き着く。
ちなみにヌメたはまだスピスピ夢の中。お寝坊さんめ。
あたしも人のこと言えないけど。

「乗っかかってくるなよ…」
「いいじゃんべつに。のしかかり〜」

ホップは前のめりになっていたので体重がかかっているようだ。
でもおんぶできたくらいだし、これくらい平気よね?
もう一度のしかかり〜としがみつけば、身体が強張ってきた。
相変わらずピュアッピュアですね。好き。

「胸当たってるのドキドキしちゃう?」
「!?だから女の子がそういうこと言うなよ!」

わざと耳元で囁くと、焦って振り返るホップ。
顔赤くしちゃって、かっわい〜!
だからホップをからかうのは止められない。
すいませんね、中身は悪い大人で。

「へえ〜これが描いた絵?ってうま!めっちゃ上手じゃん!」
「へへっ、俺は絵描くの得意なんだ!」
「すごい!ほんと上手!このウールーめっちゃ似てる〜!」

手元を覗き込むと、そこにはお昼寝しているウールー群が。
いやほんとうまいな!しかも見ないで描けるってすごっ。
素直に褒めれば、彼は自慢気に鼻を鳴している。

「いいなあ、絵の才能あるっていいね。うらやま」
「ナナシも描くか?」
「んー…あたしあんまり得意じゃないんだよね。下手ではないけど」
「ふーん」
「下手ではないけど」
「そこ強調するんだな…」
「下手ではない」

実際の所、あたしの絵は下手ではない。ガチで。
ただ絵心?っていうやつが欠如してるのか、微妙なんだよね。
間違ってないけどこれでもない…みたいな。

「じゃあいいだろ。ほら、余ってるスケッチブックやるから」

ホップに一冊、テーブルに置いてあった方を手渡される。
仕方ないですね、そんなに言うなら見せてあげましょう。ワタクシの作品を。

「被写体は…ヌメた!君に決めた!」
「ってまた背中もたれるのかよ…」
「だって背もたれ必要だもーん」

ホップはテレビ、あたしはソファ。お互い逆を向くので、背中合わせ。
ティーンでも男の子だね〜。あたしより大きい。当たり前か。

そして黙々とペンを走らせ。

「…よし!できた!」
「おっ、見せてくれよ」
「はいどうぞ」

ん〜これは我ながら良い出来じゃないか〜?
ちょっぴりドヤして、ホップに見せたのだが。

「……」
「……」

なにその反応。なにその反応!
ホップは真顔でじっと眺めている。
なに?カラーじゃないのがいけないの?

「なにその無言」
「いや…なんていうか」
「なに」
「普通だな…」
「……」

普通ですけど?
上手くも下手でもない、いたって普通な絵ですけど?

「下手ではないんだぞ!ただ、なんというか…」
「……」
「普通だな…」
「だから言ったじゃん!」

くっそー!微妙にフォロー入れてくるのが腹立つ!
ホップのくせに生意気だぞ!
うそごめん。君は良い子。好きだよ好き。

「でもコレジャナイ感あるよね」
「うん」
「……」
「ご、ごめん…」

即答しやがった。
急いで謝ってくるのがハートに刺さる刺さる。

「どうやったらそんな風に描けるの?」
「さあ…感覚でやってるからわからないんだぞ」

感覚かー
それ生まれ持った才能ってやつですよね?知ってた。

「もういいもん。あたし塗り絵する」
「塗り絵?」
「ホップのこのイラストたち、塗ってもいーい?」
「……」
「色つけるのはうまいの!」

躊躇してるホップ。なんだよ、自分の作品を汚されるのがいやだって?
ひどい人!こういう場合は得意技です。

「う…別にイタズラするわけじゃないのに…」
「!?ちょ…な、泣くなよ…」

はい、嘘泣きです。いやこれだけで泣くってどんな子供だよ。
でも案の定ホップはオロオロしだした。
目の前で女の子に泣かれたことないんだろうなー

「…じゃあ、してもいい?」
「いいから、泣かないでくれよ…」

弱り切った声で返事をするホップ。
よし、言質は取ったぞ。

「やったあ!ありがとー!」
「!?う、うそなきは卑怯だぞ!」
「うそじゃないもーん。ほんとに泣いたもーん」

やっとギミックに気がついたらしい…が。
ざんねーん!もう許可は取りましたー

「それじゃこのチョロネコから塗ろ」
「うそなきは卑怯だぞ!」
「卑怯じゃないもーん。涙出たんだもーん」
「ホップ!あんたナナシちゃん泣かせたの!?」
「げっ、かーちゃん!」

不幸にも、おばさんに一部分だけ拾われてしまったらしい。
ナナシが!とか説明してるけど、ママは女の子の味方なんだなあ。ごめんね。

その後、丁寧にカラーリングしたイラストを見せたら絶賛してくれた。
ほらね、あたし色付けは得意だって言ったでしょ?


「でも絵は下手なんだな」
「下手ではない」



2020.10.10