「ヌメた、お水遊び楽しいね〜?」
「ンメ♪」
天気がいいので、お庭の池にヌメたを入れてあげる。
彼は乾燥が大敵なのだ。人間のお肌もだけど。
「ナナシちゃん、遊びにきたよ!」
「あ、ユウリ。いらっしゃいませー」
「ふふ。いらっしゃいましたー」
かわいいなあ。
ホップが紹介してくれた、お隣さんのユウリ。
いつもニコニコしてて、彼に負けず劣らずの良い子だ。
「このヌメラが手持ちにしたコ?」
「うん。この間落ちてきたの」
「落ちてきた?」
「空から」
「空から!?」
しゃがんで仲良くおしゃべり。
ホップは一人でお出かけしているようだ。
うーん。かわいい女の子と話すのって癒されるね。
「すごい出会いだね」
「メア!」
なぜかユウリにむかってドヤさ!するヌメた。
いやあなたその後ガチ泣きしましたよね?
男のプライドを尊重して言わないけどさ。
「触ってもいい?」
「どうぞどうぞ」
やっぱりこのかわいさ、たまんないよね〜
ユウリは嬉しそうに手を伸ばす。
思ったよりヌルヌルしてるけど、ガッカリしませんように。
ちなみにあたしは結構ガッカリした。内緒だけど。
「ンエ゛!」
「あっ…威嚇されちゃった。私嫌われてるのかな?」
「ご、ごめん。このコてっきり男の子が苦手かと思ってたんだけど」
ホップにはなぜか厳しいヌメただけど、ユウリなら大丈夫だろう。
そう思ってたのに、あっさりと予想を裏切られる。
ご機嫌を損ねてしまったらしいヌメたはプンプンだ。
「メ゛ッ!」
「女の子もダメなの?」
「メ゛ーッ!」
めー!ですかそうですか。
もしかしてあたし以外の人はみんなダメってこと?
なにそれ。キュンキュンしちゃう!ユウリには悪いけど。
「もう、しょうがないなあ〜ヌメたは」
「ヌンメ♪ヌンメ♪」
ついニヤけそうになるのを堪えてナデナデ。
一瞬でニッコニコになるヌメた…なにこれかわいすぎる。
ごめんねユウリ。このコはあたしだけのヌメラなの…
「いいなあ」
「え?」
「私もヌメラになりたい」
ありがたいことに、ユウリに気分を害した様子はなかった。
なんて良い子なのかしら…あたしも見習わなきゃ。
いや無理だな。これで20年以上生きてきたから無理だ。
そんな彼女が、ふと漏らした言葉。
ヌメラになりたい?ああ、分かるかも。
だってめちゃくちゃキュートだもんね。気性が荒くっても許せちゃう。
あんたのことだぞ、ヌメた。
「かわいいもんね、ヌメラ」
「んー?ふふっ、そうだね。ほんと……かわいい」
うっとり、と形容できそうな程に甘い眼差しとかち合う。
なにその表情めっちゃかわいい。こりゃ男はいちころですわ。
でもねユウリさん。ヌメたはこっちですよ。
「メロメロだね」
「だって一目惚れだから。今すぐにでも食べちゃいたい」
「いやヌメラは食用じゃなくない!?」
というか食べらるのか?
粘膜に雑菌大量なんだぞ!食中毒まったなしでしょ!
ヌメたも身の危険を察知したのか、本格的に威嚇を始めた。
「ヌ゛ア゛ー!」
「ふふ。そういうところもね、すっごく好き」
「ええ…ユウリって意外とガッツ?あるね…」
こんな怒ってるのに?
いや小さいから迫力ないし、怖くはないけどさ…
さすが主人公なだけある。大物だわ。
あとねユウリさん。ヌメたはこっちですって。
「キュートアグレッションっていうんだよ」
「なにが?」
「かわいすぎて食べちゃいたいとか、潰すくらいギュっとしたいとか、そういう衝動のこと」
「えええええええ」
名前あるのかよ!なにそれ。ガラルの人間やべえ。
待てよ…もしかしてあたしの世界にもあったのかな?
いやあったとしてなんだよ!あっちもこっちも人間やべえ。
「ナナシちゃんにはないの?」
「ないよ!好きなら愛でてよ!優しく愛でて!」
天使の顔でないの?って聞かれてもないよ!
こりゃ大変だ。ヌメたの危機ぞ!
トレーナーのたまごにも満たないあたしだが、彼を守らなくては!
急いでヌメたを回収。服がベッチャアなったけど気にしない。
「ヌ、ヌメたにそんなことしちゃダメだからねっ」
「ゥン゛メェ!ヌンエ゛!」
「ふふ。もちろん、ヌメたにはしないよ?」
「(ああ…ということは、いつかどこかのヌメラが…)」
あたしはそっと天を仰いだ。未来で犠牲になるだろうヌメラに心の中で合掌する。
もしその場にあたしがいたら、必ず止めてあげるからね……
いなかったらごめん。愛の証だと諦めてくれ。
「安心してね。その時はちゃんと優しくするから」
「え?ほんと?」
「だって、優しく愛でてほしいんでしょ?」
「うん」
「だから、その時が来たらちゃんと優しくするね?」
コテン、と首を傾げて微笑むユウリ。
おお…!あたしの説得が通じたようだ!
よかったね、どこかのヌメラ。ユウリはきっとかわいがってくれるよ…
「ふふ。やっぱりね、そういうところもすっごく好き」
「?」
「メ゛ッ!メ゛ッメッ゛メ゛ェーッ!!」