「ダンデさーん、何か届きましたよ?」
「ん?ああ、それか…開けていいぜ」
割と大きな段ボール。
普通の茶色いやつじゃなくて、化粧箱チックに仕立てられたやつ。
いかにも上等っていうか誂えてます感あるけど、ほんとに開けていいのかしら。
まあ開けちゃうけど。ダンデさんOKしてたし。
「え!?なにこれかわいい!」
「気に入ったか?」
「は!い!!」
「テンション高いな」
そりゃそうでしょう!なんと入っていたのはちっちゃいダンデさんだ。
正確にはダンデさんのぬいぐるみだ。デフォルメされたデザインの。
なにこれなにこれ!めっちゃかわいい〜!
「10周年を記念して、俺やジムリーダーのグッズが作られることになったんだ」
「なんと!すてき!」
「第1弾のサンプルが届くと聞いたから、それがそうなんだな」
ジムリのグッズ!?なにそれ!誰だ企画した人は!天才か!
うっきうきでボックスを除くと、他にもダンデさんのキャップレプリカやステッカーが…!
「ダンデさんのキャップ!」
「よくできてるな」
「お揃い〜♪」
うん。でかい。まあ男の人サイズだからね。
ブカブカだけどデザインかわいくて最高です!
ちなみにダンデさんはさり気なくあたしが被ってる様子を撮ってた。
盗撮ですね?バレてますよ。別にいいですけど。
「確か近いうちに予約も始めると言っていたな」
「なんと!予約しなきゃ!」
「?買うのか?」
「これは保存用にしますもん」
むぎゅ、とチビダンデさんをハグ。いいサイズです。
おひげもしっかり再現されちゃって!かわいいなあ!このこの〜
「……」
「どうしたんですか?」
「いや…なんだか複雑な気分だ」
「?」
その後、やたらくっついてくるダンデさんをあしらいながら、お目当てのものを全部予約した。
うれしー!発売が楽しみだなー!
「キター!!」
「テンション高いな」
ダンデさんは苦笑してるけど、全然気にならない。
なぜなら…とうとうやって来たからだ!例のグッズたちが!
「じゃ〜ん!ルリナさんとサイトウさん!」
「そうか、彼女たちも第1弾だったな」
「えへへ…すっごくかわい〜!」
いつもは凛としてて綺麗な二人のキュートなチビぬいぐるみ。
デザインした人、神かよ〜!最高です!好き。
「そしてちっちゃいダンデさーん!」
「本当に買ったんだな」
「当たり前ですよ!今日からこっちのダンデさんと一緒に寝るんですもん」
「!?」
それは俺の特権だぜ!とかぬいぐるみ相手に主張しているダンデさん。
この人はいったい何と戦っているんだろうか。
「それにしても随分と箱が大きいな」
「だって他にも…あ、あった!」
「?」
「キバナさんとネズさーん!」
「!?」
今回の発売ではキバナさんとネズさんも対象だ。
予約特設サイトで発見し、一瞬でハートを撃ち抜かれた。
だってキバナさんのふにゃ〜ってした雰囲気とか、ネズさんの気怠げな表情とか、もうめっちゃかわいいんだもん!
こりゃファンじゃなくてもたまんないね。好き。
「ちょっと待ってくれ」
「どうしたんですか?」
「ルリナとサイトウはいい。君は2人を慕っているからな」
「はい」
「小さい俺もまだいい。そこは譲歩しよう。俺だからな」
「ええ…」
いやそこ譲歩とか必要あります?
やたら俺俺強調してますけど、ぬいぐるみですよ?
もしかしてこの流れはあれか?
「だが、なぜキバナとネズまでいるんだ」
「ええ…」
やっぱり来ちゃったよ!
んもう、ほんとにこの人は!いったい何と戦ってるんですか!
「大人気ない…」
「何とでも言ってくれ」
腕を組んで仁王立ちするダンデさん。
本格的に拗ねてしまったらしい。
いやこれがね?例えばヌメただったらわかるよ?
ぬいぐるみのヌメラに嫉妬してプンプンしてたらさ、愛いやつめ〜!ってなるよ?
でもね?相手はマッチョなおにいさんだよ?
成人男性が無機物相手にジェラシーよ?
「ダンデさん。これはぬいぐるみですよ」
「でもキバナとネズだろう」
そんなに私のこと…(キュン)な人もいるでしょうけど、あたしはそうじゃありませーん。
普通に困惑。どういうことだよ。大人の階段上ってください。
「ダンデさん。これは皆さんを模したグッズです」
「そうだな。キバナとネズだ」
「…よくできてるけど、ご本人ではありませんね?」
「キバナとネズだ」
「……」
話通じないなこの人!それしか言わないし!
こんな調子じゃ、そのうちあたしのモンボ(モンスターボール)にも嫉妬するんじゃ…
うん、考えるのは止めておこう。割と笑えない。
「傷ついたぜ…目の前で浮気を目撃するとはな」
「ええええええええ」
目元を押さえて頭を振るその様子が、不思議と芝居がかってないのはマジだからなのか。
そんなグラスハートじゃないですよね?てか浮気じゃないし!その理屈はおかしい。
「浮気じゃないです!いやこの際浮気でもいいです!絶対に手放しませんからね!」
「む…聞き分けのないコだな。反省の色なしか?」
「聞き分けないのはどっちですか!」
反省も何もありませーん。あたし悪いことしてないもーん。
腕に抱えたおチビーズをしっかりホールド。
ちゃんとお金を出して買ったんです!取り上げられたらたまったもんじゃない。
「そうか。なら仕方ないな」
「え…な、なんですか…」
思わず怯む。だってそのセリフの後は、大抵ロクなことがない。
めちゃくちゃ警戒しながら距離を取ると、ダンデさんはじっとこちらを見つめてきた。
その眼…バトルとか獲物を狙う時のやつじゃないですかやだー!
「悪いことをしたらごめんなさいだ。わかるよな、ナナシ」
「いやいやいや!あたし悪いことしてな…!やー!」
「俺は傷ついたんだ。責任を取ってくれ」
あっさり捕まえられ、簡単に担ぎ上げられてしまった。
ジタバタ暴れるけどビクともしない。さすが鍛えてますね。
落ちそうになったおチビーズを慌てて抱え直す。
やばい状況だけど、なんとしても死守する…!死守してみせるぞ…!
「…ああ。なるほど」
寝室へ向かっていたのに、ピタリと足を止めるダンデさん。
チャンスだ!もう一度抵抗する。
はい、まったく意味なし。ですよねー
「見せつけてやればいいのか」
「は…はいっ!?」
「そうだな。俺のものだと、キバナとネズに見せつけてやればいい」
「なっ、なんでそうなるんですか!?」
おいおいおい!なんか変な方向にまた行き始めたぞ!?
この方向音痴!方向音痴モンスター!
「よし、そうしよう」
「へ…変態だー!ダンデさんの変態!ジュンサーさんこっちです!」
「変態なのはナナシの方だぜ。こら、暴れるんじゃない」
「やだー!!!」
この後、ベッドの上で散々お説教されたあたしは、しばらくぬいぐるみたちと目を合わせることができなかった。
「うう…せっかく寝室に並べようと思ってたのに…」
「俺は別に構わないぜ?なかなか楽しめたからな!」
「絶対置かない」
おまけ