ボクはヌメた


ボクはヌメた。
誇り高きドラゴンポケモンだ。
アオガラスに捕まれてこの町にやって来た。
あのアオガラス…次に会った時はボコボコにしてやるからな…

「う〜ん…ヌメた…ぉぁょぅ…」

ベッドでむにゃむにゃ言っている彼女はナナシ。ボクのマスターだ。
あの日、落ちてきたボクを真っ先に心配してくれたこと、今でも忘れない。
彼女を見た時、なんだかすっごく安心して泣いちゃったんだ。ボクとしたことが!

でもナナシは一生懸命抱っこして慰めてくれた。すごく優しかった。
それ以来、彼女の腕の中だけは泣いていいことにしたんだ。ボクだけのルールさ。

「ホップ…おはよぅ…」
「相変わらず起きるの遅いんだぞ」

いつものように、ボウルに入ったボクを持ってリビングへ降りるナナシ。
案の定ホップはもう外に出る支度を済ませていた。
ボクはこいつがちょーっとばかし気にくわない。
だって!すーぐナナシにデレデレするんだ!ボクのマスターだぞ!

「準備完了!お待たせしましたー」
「ふふ。おはよう」

この女の子はユウリ。お隣さんってやつだ。
いつもニコニコしてるけど、実は腹黒いってこと、ボクは知ってる。
この間なんか、一目惚れだってナナシに言ったんだ!ボクのマスターだぞ!

「早く行こうぜ!」
「はいはいっと」

でもさ、ナナシってちっとも気づかないんだ。アレもコレも。
だからその分ボクが守ってあげなくちゃ。だってボクのマスターだもんね!

「それじゃあヌメた、今日もお出かけしようねー」

ねえ、ナナシ。
あの時、泣いてるボクに大丈夫って言ってくれたよね。
だから今度はボクの番。どんなことがあっても、君は大丈夫。

「ンメリャ!」

そうさ。ボクはドラゴンポケモン。
主を守る為ならどんな敵にだって立ち向かう、誇り高きドラゴンなんだ。


2020.10.30