ボクはヌメた その2


ボクはヌメた。
誇り高きドラゴンポケモンだ。
今日はとんでもないやつが現れた。

「このヌメラが君の相棒なのか?」

こいつはダンデ。チャンピオンってやつらしい。
いかにもって感じにオーラが溢れてる。
なんだよ、マントなんか羽織っちゃってさ!
でも問題はそこじゃない。

「よう、チビすけ。俺はリザードンだ」

こいつだ。ダンデの相棒とやらの、リザードン。
こいつ最強とかなんとか言われてるらしい。
なんだよ、お高く留まっちゃってさ!
ボクは誇り高きドラゴンなんだぞ!

「チビすけじゃないやい!ボクはヌメた!」
「へぇ。ニックネームつけてもらってんのか」

悪いやつじゃないっていうのはわかる。
でもさ。このどことなく上からな目線!
俺の方が強いぜってオーラがプンプン漂ってる。
ふん、なんだよなんだよ!ボクはみずでっぽう使えるんだぞ!

「リザードンは近くで見ると迫力あるねえ、ヌメた」
「かわいい嬢ちゃんじゃねぇか。チビすけのマスターか?」
「ヌメた!あとナナシ!彼女はナナシ!」
「わぁったわぁった」

こいつの隣にいるナナシは、いつもより小さく見える。
並んでいると、まるでお姫様と竜の騎士みたいだ。
…なんだよなんだよ!ドラゴンはボクだぞ!

「ま、お前も早く大きくなるこったな」
「なんだよ!ダンデの相棒だからって、ボクを馬鹿にしてるな!?」
「別にンなことしてねぇし。嬢ちゃんは気に入ったけどよ、っと」
「ぅわっ!?」
「あ、なにすんだよ!」

こいつ!急にナナシのこと抱っこしやがった!
ナナシはビックリしてたけど、すぐ嬉しそうにお姫様抱っこだ〜!なんてキャッキャしてる。
なんだよなんだよ!君はボクのマスターなんだぞ!

「すごーい、たかーい」

…ナナシはやっぱり、大きいポケモンの方がいいのかな。
悔しいけど、相手を威圧するって意味だと、大きければ大きいほどいいのは事実だ。
ボクはナナシよりもずっと小さい。背中に隠すことだってできないし…

「よし、これなら夢のアレをできる。ヌメた、おいでー?」
「え!?」
「高い高いしてあげる!」

あたしが普通にやっても高くないからさ。
そうやって楽しそうに笑うナナシ。
なんだよなんだよ。そんなの反則じゃないか。

「ヌメたくん、高い高〜い」
「たかいたかーい♪」
「リザードンもかっこいいけど、やっぱり抱っこできるヌメたが一番!いつまでもそのままでいてね」
「うん!ボクずーっとヌメラでいるよ!」

進化したら、リザードンみたいになれるかもしれない。
でもナナシに抱っこしてもらえないのは嫌だ。
彼女の腕の中で泣けなくなるのも嫌だ。

だからボクはヌメラのまま強くなる!
誰よりも強い竜の騎士になるんだ!!

「腕の中でイチャイチャすんなや」

ふん、悔しいんだろ?顔に出てるよ。
さっきのお返しさ。
抱っこしてもらえる幸せ、おすそ分けしてあげるよ。


2020.12.08