ハッピーハロウィン 前日譚


「よっし…できたー!!!」
「ヌンメ〜!」
「キュッキュッ♪」

ようやく完成した衣装に、近所迷惑を考えず思いっ切り大声を上げた。
まあ今は真っ昼間だし、大丈夫でしょう。

「超大作だよ〜…時間かかったけど、頑張ってよかった〜!」

何をこうして頑張っているのかというと、全てはハロウィンの為だ。
基本イベント事に興味のないあたしだが、ハロウィンだけは別!
お菓子はもらえるし、パープル×ブラック×オレンジのカラーリングもかわいいし、何より仮装を楽しめるのが最高!
この世界にもハロウィンがあることを知ったあたしは、その瞬間ハイテンションでヌメたと小躍りした。

ちなみに、ガラルのハロウィンはナックルシティをメインに行われるイベントらしい。
中世の面影を残したあの街は、確かに雰囲気ピッタリだと思う。
アラベスクタウンもいいけど、人が集まるにはちょっと小さいしね。

そのイベントというのも、まずジムが音頭を取って其々の町をハロウィン仕様にすることから始まる。
当然街によって個性が出るので、それらを眺めるのも楽しみ方のひとつだとか。
10月に入るとそれが始まって、31日のフィナーレでは、ナックルシティのストリートで出店が開かれる。
お祭り騒ぎで賑やかになり、完全に暗くなった頃、花火が打ち上げられて―――

「死者の鎮魂祭は無事終了、ってことらしいよ。わかった?」
「ンメ」
「キュ」

ルンルン姿見の前で衣装を合わせるあたしは、ヌメたとミッキュンに説明する。
何度もしているせいか、聞き飽きたと言わんばかりの視線だ。しつこくてすいませんね。

「さーて、実際に着てみますか」

初めてのハロウィン。記念すべき第一回目の仮装は、迷った結果ミミッキュにした。
本当はヌメラにしようかと思ったんだけど…せっかくなのでゴーストタイプを採用。
まあ、ヌメたはいつも贔屓にしてるし、たまにはね?ヌメた不満そうだったけど。

「うんうん。我ながら高クオリティ!」

いやほんと頑張ったよあたし。この為に3週間近くなんでも屋さん休業したし。
胴体にはミミッキュカラーのボロ布(風に仕立てたワンピ)、頭にはきぐるみのミミッキュヘッドを装着。

「お揃い〜」
「キュキュキュ〜」
「ヌ゛ッ…」
「ヌメた、そんな拗ねないでよー」

あからさまにムッとするヌメた。かわいいなーヤキモチ妬きヌメた、かわいいなー
でも放置するとマジでプンスカするので、抱っこしてご機嫌を取ろう。
そう考えて行動しようとしたあたしは、とんでもないことに気がついた。

「腕出せない…」
「メア?」
「なんてこった…」
「ミッキュ?」
「これじゃあお菓子受け取れないじゃん…」

しまったー!クオリティを追求するあまり、本物同様に裾からしか腕が出ない仕様になっていた。
はい詰んだ。詰んだよ。お菓子もらえないよ。

「バカだ…」

ほんっっっとうにショックだ。アホすぎる。何で今まで気づかなかったの?
あたしの脳みそ、ちゃんと機能してんの?いやしてないわこれ絶対機能してない。

ガチで凹んだあたしは、ヨロヨロと部屋の隅まで行き蹲る。
ちなみにミミッキュヘッドは外して体育座り。今のあたしにはずーんという擬音が似合うだろう。

「もう二度と外に出ない」
「ヌンメ〜ヌンメ〜」

ヌメたがツノであたしの背中を撫でてくれるが、落ちた気分はそう治らない。
でも慰めてくれるのね…ありがとう。大好き。

「ッキュ!」
「ん…ミッキュン?」

どうやら顔を上げろと言っているらしいミッキュンに従う。
するとそこには、大きなボウルを頭に載せたミッキュンの姿が…!

「…もしかして、ミッキュンが代わりにお菓子持ってくれるの?」
「キュッキ!」

やだ〜優しすぎる…うちのコたちって何でこんなに素敵なの?天使?
裾から手を出してミッキュンとヌメたをよしよしする。
分かりやすく喜んでくれるから、あたしもニヘラとだらしない顔をしてしまった。
誰もいないからこんな顔してもセーフ。

「ありがとう、ミッキュン!よし、気を取り直して…この格好でトリック・オア・トリートするぞー!おー!」
「メリャー!」
「ミキュー!」

「あ、ヌメたは抱っこできないから、今回お留守番だよ」
「ヌ゛ッ!?」

この後、ヌメたのご機嫌を取るのに3時間かかった。
でもいいもんね。明日はいよいよ本番!
ガラルのハロウィン、全力で楽しむんだから!


本番当日

2020.10.03