「早く早く!もうすぐだぞ!」
「わかってるよー、じゃあ行ってきます」
ホップに急かされたあたしはヌメたをボールに入れて家を出た。
先に庭で待っていたホップはスマホを見ている。
「準備オッケーか?スマホは?」
「持った」
「お昼は?」
「持った」
「ハンカチは?」
「持った」
「バッテリーは?」
「忘れた」
やれやれと呆れた顔のホップ。すいませんね忘れ物しちゃって。
というかお母さん感ハンパなくない?
イイ男になること間違いなしじゃん。好き。
「帽子も被っておいた方がいいぞ。今日は日差し強いから」
「そーだね」
取りに戻るついでに、アドバイス通りキャップもセット。
やばい時間ないじゃん!急げ急げ。
「今度こそ忘れ物ないな?じゃあ行くぞ!」
「うい。てか待って起動するか…あ!ペロッパフがいる!」
「だから言っただろ!早くしないとイベント終わっちゃうぞ!」
その場に留まろうとしたあたしは、ホップに手を取られ走り始めた。
何をこんなに慌ただしくしているのかというと。
「あっちのスポットに影発見!」
「向こうか?わかった!」
今日は記念すべきヌメラのポゲットデビューなのだ。
あ、ポゲットというのは『ポケモンGet』の略。大人気のスマホゲームアプリね。
このゲームは名前の通りポケモンを捕まえて、おやつをあげたり写真を撮ったりバトルしたり…
まあ現実世界の延長って感じ。
「着いたぞ!」
「どこにいるんだろ」
「あの茂みとかじゃないか?」
ポケモンはあちこちいるのに、何でこれが人気なのかって思うじゃん?
答えは単純。ポケモンは生き物で、飼うのにも限界があるからだ。
あたしの世界じゃゲームでしたけどね。
ゲームだったらほぼ無限にゲットもお世話もできますけどね。
「カメラ起動!どこですか〜」
「ゆっくり動かすんだぞ」
でもこの世界で好き放題ポケモンを飼うなんて、まあ無理な話だ。
エサ代・スペース・ポケモン同士の相性など制限は多くある。
だからトレーナーでも平均で5〜6匹、10匹以上は珍しいんだとか。
確かにダンデさんやキバナさんもそんなに行かないもんね。
「足跡出てこないんだけど」
「もっとゆっくりしないと…」
カントー発祥のこのゲームはガラルでもあっという間に広まった。
ただし実装されているポケモンは限られており、ガラル図鑑の番号順に随時追加されている。
そして今日はついに!ヌメラが加わるのだ!
「あ…いたいた出たー!」
「よし!きのみあげてボール投げるんだぞ!」
とは言え、あたしはヌメラ追加のニュースを聞いて始めた完全ビギナー。
リリース直後からプレイしているホップに手伝ってもらいながら、バーチャルヌメラ捕獲作戦を遂行中だ。
「やったー!ヌメラ、ゲットだぜ!」
「よかったな!俺もゲットしたぞ!」
無事にボールへ収まったVヌメ(バーチャルヌメラ)をチェック。
なんと。このコ♂じゃん!ヌメたで決まりですわ。
「ニックネームはヌ、メ、た、っと」
「早速相棒にするんだな」
「だって歩いてるとこ見たいんだもーん」
おやつをあげて…うわ一緒に歩いてる!足遅っ!かわいい!
マジでヌメたじゃん!好き。
「あっちにも出たから行こうぜ!」
「行く行くー」
あとでリアルヌメたとバーチャルヌメたのツーショットやってやらあよ!
ホップに手伝ってもらお。てか上手いから撮ってもらお。
「ホップ、マジでありがと。ウールーの時はあたしが手伝うからね!」
「ウールーはとっくに追加されてるんだぞ」
されてましたか。手伝い不要じゃん。
でもなぜかホップはニコニコしている。
「けど、俺いっつも一人でやってるから…またこうして二人でやろうぜ!」
「ホップ…!」
おいおい相変わらず良い子だな。
天使?天使ですね、ハイ。
「ぼっちプレイ寂しくなったら呼んでね」
「ぼっちプレイって言うなよ!」
やいやい騒ぎながら次のスポットへ。
本日は晴天。暗くなるまでがっつり歩き回ろう。
「あっちにいたぞ!」
「りょ!」
君と二人で、ね。